言語機能検査の目的は〜言語聴覚士のお仕事

言語機能検査の目的は〜言語聴覚士のお仕事
私は脳神経外科病院に勤めています。担当する入院患者さんは、急に具合が悪くなり救急車を呼んだ人、倒れているところを発見されて運ばれてくる人、なんか変だなと思って「とりあえず脳の病院にでも行ってみるか」と気軽な気持ちでくる人など、当院に来るきっかけは様々ですが、共通していることは「いきなり来て入院になった」です。
重症度も様々で、ずーっと意識がはっきりしている人も少なくありません。そういう人の多くは「なにも問題ないじゃないか。すぐに退院できるな、よかった、よかった」と思っています。しかし、中には高次脳機能障害といって、日常生活や仕事に差し障りが生じる障害を呈している人が、ある一定の割合でいるのです。そのためには、標準的な検査を実施したり、生活状況を詳しく聴取するなどが必要となります。

検査の一番の目的は、退院後の生活のために。医療者が障害を把握するためではない

検査はスクリーニングといって簡易なものから、1時間以上もかかる複雑なものまであり、その人に必要なものを選択して実施しますが、当然、患者さんは「検査は嫌い」です。若い言語聴覚士が相手だと特に怒ってしまったり、不機嫌になる人が続出します。患者さんからしたら当然です。
  • いきなり病気、入院となってショックをうけてる
  • すぐに「リハビリの担当です」と知らない人が来て「検査をお願いします」と言われる
  • 計算やら、数を覚えたり、文章の中から指定された文字を見つけて消していったりなど、「これまでの生活でしていない」ようなことをたくさんさせられる
  • おまけに、自分が思っているよりもできない
  • 脳が疲れて頭が痛くなりそうだし、いらいらする
狭い言語室で淡々とこなす様子は、取調室のようで、ますます心が折れます・・だから始めにきちんと納得してもらう必要があるのです。「症状を把握するためです」は医療者の都合です。そうではなくて「退院後の生活のため」です。
  • 障害年金や、休業手当の申請、自動車免許の適正検査など、公的資料に使うため
  • 職場や家族に、今、苦手になっていることを理解してもらうため
  • あなたが退院したあとすぐに、今まで通りの生活ができなかった場合、自分のやる気とか気持ちの問題ではないということを周囲に理解してもらうため
  • 回復までに時間がかかる人の場合は、よくなったのかどうか判断する指標としてという目的もあります。
いずれにしろ「今の自分の状況を知っておいて、退院に向けて心の準備をするため」という視点は外せないと思います。

検査しないとわからないこともあるので、遠慮はしないで

患者さんにとって負担となりがちな検査ですが、やはり、検査を実施して初めてわかることもあるのです。思ったよりも「見落としが多い」「言葉がうまくまとまらない」などなど、特に軽度の人において「え!」ということがあります。
あと、病巣とは関係ない機能が低下していて、もしかして病前から?と思い、お尋ねすると、「実は、前から苦手で仕事で困っていました」という事例も少なくありません。そう、今でこそ、発達障害って取り上げられていますが、昔はそんなこと教育現場でも知らない人が多かったので、診断をうけずに大人になっている人もいるのです。私は医者でないので「診断」はできませんが「もしかしたら」という説明をして、必要に応じてアドバイスや相談先をご紹介します。悩んでいた人は、たいてい喜ばれます。
検査をすることで、担当の言語聴覚士を嫌いになるのか、または信頼してもらえるのか。そこは私たちの腕の見せ所です。何年たっても、検査を実施するときは、身の引き締まる思いがします。

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