講演会レポート③ 片付けが苦手な高次脳機能障害の方への支援 – 練習?それとも代替手段?

前前回、前回に続き、兵庫県加東市での講演会レポートです。今回は、参加者の方から頂いた質問についてです。
お財布の中がぱんぱん!
ある相談員さんからの質問。
「片付けが苦手な方とか、お財布がパンパンな方に対して、できるように練習する方法を選ぶか、代替の手段や周りの人が手伝うかは、どういうところで見極めたらいいですか?」
練習するか、代償手段を使うか、はたまた周囲の人が手伝うか、家族や支援者の方が日々直面する悩みですよね。
「できない」と決めつけない大切さ
私たちがまず大切にしたいことは「この人はこうだ」と決めつけないことです。
高次脳機能障害のある方の回復や適応は、時間とともに変化していきます。今日できなかったことが、1ヶ月後にはできるようになるかもしれません。逆に、疲労や体調によって一時的にできなくなることもあります。
小さな一歩から始める練習
まずは小さなことから始めて、どこでつまづくのか一緒に確認してみましょう♪
例えば、お財布の整理なら:
- お財布の中身を全部出す
- 「レシートはここ」「カードはここ」と一緒に入れ直す
- これを、週に1回など、定期的に繰り返す
定期的がポイントです!繰り返すことで、できることと、どうしても難しいことが双方わかってきます。
お部屋が片付かない!
これも分解して、おおざっぱに分類していきましょう。
- 部屋全体ではなく、机の上だけ
- さらに引き出し一つだけ
- 「よく使うもの」「たまに使うもの」「使わないもの」の3種類に分ける
- 「よく使うもの」を手前に、「たまに使うもの」は奧に、「使わないもの」は捨てる
- これを定期的にする
片付けの工程を確認してみよう
10個の工程のうち1個でもできることを見つける
例えば片付けという作業を分解すると:
- 散らかっていることに気づく(注意)
- 片付けようと思う(意欲)
- 何から始めるか決める(遂行)
- 物を手に取る(注意・選別と選択)
- それが必要か判断する(遂行)
- 置く場所を決める(遂行)
- 実際に移動させる(注意・記憶)
- 次の物に取りかかる(遂行)
- 全体を確認する(俯瞰して確認と言う意味では遂行。全体を見渡すという意味では注意)
このうち、例えば「4. 物を手に取る」「7. 実際に移動させる」はできるなら、その部分だけやってもらい、他の判断や計画は支援者が一緒にする、という方法もあります。
生活に支障がある部分は代替手段も
同時に、日々の生活の中では「失敗しない」ことも必要なので、代償手段も入れましょう。
代替手段の例:
- お財布:カード決済やスマホ決済に切り替える
- 片付け:定期的に家族や支援者が一緒に整理する時間を設ける
- 重要書類:専用のボックスを用意し、そこに入れるだけにする
支援は固定せず、調整し続ける
高次脳機能障害の支援で大切なのは、「今はこの方法」という柔軟さです。3ヶ月前は全面的に手伝っていたことが、今は半分くらい自分でできるようになっているかもしれません。逆に、疲れが溜まっている時期は一時的にサポートを増やす必要があるかもしれません。定期的に「今、どこまでできているか」「何が負担になっているか」を確認しながら、支援の方法を調整していくことが大切です。
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