言葉って何?失語症の訓練の基本〜言語聴覚士のお仕事〜

言葉って何?失語症の訓練の基本〜言語聴覚士のお仕事〜

医療と健康、そしてリハビリの情報〜言語聴覚士というお仕事〜本日もよろしくお願いします。

「失語症とは?」「聞くとは?」に引き続き、本日は言語機能訓練についてです。

私たちが使う言葉には階層性がある

失語症とは、一度獲得した言語機能、「聞く」「話す」「読む」「書く」がなんらかの脳の損傷によって障害された状態です。一度は獲得しているところが、外国語の学習とは異なります。なので、一つづつ言葉を覚えなおしたりするのではありません。

私がよくお伝えすることは、「本箱をイメージしてください。いつもは言葉が整頓されていますが、病気によってぐちゃっとなっていて、必要な言葉が取り出せなくなっている状態です」「訓練によって整頓し直して、取り出しやすくしていきます」という事です。

そして、この整理整頓していくにあたって、大事なことは、言葉には階層性があることです。大きなくくり(カテゴリーといいます)から少しずつ分類されていって、固有の言葉に至ります。

例えば「食べ物」→「野菜」→「大根」です。「生き物」→「動物」→「犬」です。この順次で私たちの脳は情報を処理していきます。

重度の失語症の方は大まかなカテゴリーの箇所から崩れています。なので、「大根」と「犬」が異なるカテゴリーであるということからわかりにくくなっています。

より軽度であれば、同じカテゴリーの中で区別が難しく、たとえば「大根」「レタス」の区別(これは野菜)、さらに細かいカテゴリーであれば、「大根」「レンコン」の区別(根菜類)です。

さらに脳の前の部分「前頭葉」が、どのカテゴリーにアプローチするのか指南して、その後、もう少し後方領域の脳がどの言葉を選ぶか選択してくると言われています。つまり、前頭葉が「これは野菜のカテゴリーから選ぶ!」と決めて、後方の脳が「キャベツだ!」と決め打ちするのです。なので、前頭葉が損傷すると、カテゴリーから分からなくなります。つまり、なかま分けが難しくなるのです。

私たちが使う言葉には「属性」がある

それぞれの言葉には、主に、頻度、親密度、心像性といった属性があります。

頻度はいかに日常生活で頻回に使用するかです。例えば「テレビ」という言葉を聞かない、文字を見ない日はあまりないですよね。こういうのを「高頻度語」と言います。

反対に「レコード」なんて最近は聞かないですね。これは「低頻度語」です。

さらに、親密度とは、その人にとって馴染みがあるかどうかです。レコードだって、もし収集家であれば、これは高親密語です。テレビも、自宅にない人にとっては低親密語となります。

心像性はイメージがしやすいかどうかです。視覚的なイメージだけでなく匂いや音、触感などを含めます。「りんご」はイメージしやすいですが「薄い」などは抽象的でイメージしにくいですね。

これらの属性は、言語訓練を行う上で、課題達成に非常に影響を与えます。もちろん「高頻度」で「高親密度」で「高心像語」はわかりやすい言葉となります。

訓練にどんな言葉のカードを選択するかが肝〜言語聴覚士のお仕事〜

このようにどのカテゴリーから、属性を考慮して何の言葉を使用するか、その人の言語機能に合わせて選択していく必要があります。さらに、絵カードを使用するので「絵」として描けるものでないといけません。

これ、とっても難しいです・・

おまけに、いろいろな言い方をする言葉ありませんか?例えば「トイレ」なんて「便所」「お手洗い」もありますし。人によってはお手洗いの方が高頻度であったりしますし。同じ対象物なのに。

「医者」なんて「先生」「医師」「ドクター」とか。これらは軽度の人以外は、基本的には訓練で使うのはNG だそうです。または、病前、どの表現を使っていたか確認が必要です。

以前は、なんとなくベット周囲にあるものを訓練課題にしていましたが、指導して頂いてからは、このあたり、こだわるようになりました。使いたいカードがないとき、PCでプリントアウトなどもいいかと思います。

画像検索者 ヨキンコ

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