完全には治りません。社会復帰はあきらめてほしい〜高次脳機能障害者の声なき声〜言語聴覚士というお仕事

完全には治りません。社会復帰はあきらめてほしい〜高次脳機能障害者の声なき声〜言語聴覚士というお仕事

重度のままリハビリ病院に転院し、数日内に主治医から病状の説明をうけました。

これまでの経緯はこちらをご覧ください。高次脳機能障害者の声なき声〜言語聴覚士のお仕事

少し前に主治医が病室に入ってきてこういった「おそらく一生、車椅子生活になるでしょう。そして、高次脳機能障害もあります。社会復帰はあきらめてほしい。」ぼくは初めて聞く病気なので、意味が全然わからなかった。先生は「詳しく説明すると、今後、様々な障害が起こってくる。例えば簡単な計算問題ができない。簡単な漢字も書けない」そして最後に一言「この病気は治療方法ありません。医学的に完全には治りません」とおっしゃった。

ぼくはなんて適当なことを言っているのだろう、この病気は絶対に治してみせる、絶対に負けないと心に誓った。しかし、その心意気があったにもかかわらず、なかなか僕の障害はよくならなかった。いくら頑張っても一向によくならない。

ぼくは、負けない心、折れない心、信じる心を胸にしまっておいた。

彼はある日突然、脳出血で倒れました。出血量は多く、すぐに手術をして血の塊を摘出しましたが、その手術は12時間に及ぶものでした。一生、意識が戻らないかもしれない、そう説明を受けてからの手術でしたが、なんとか意識は戻りました。そして、残ったのが左の手足の麻痺と高次脳機能障害です。

病前と同じ状態にはもどれない。この事実を受け止めるまでには時間がかかる

患者さんの予後予測は非常に重要なことです。できないことはできないとお伝えし、経済を含めて、今後の生活をどのように組み立てるのかを検討しなくてはいけません。患者さん、家族さんの立場からすると、投げ出されたとしか思えないかもしれませんが、できないものはできません。曖昧な希望を抱かせるのはかえって無責任なことです。ただし、ここに需要なポイントがあります。病気をする前と全く同じ状態にはもどれませんということです。この主治医が伝えた「完全には治りません」という言葉は、こうした意味であると私は考えます。

医療現場では、少しでも機能改善できることに全力で取り組むことと同時に、何ができるようになり何ができないのか見据えて、新しい生き方を模索していく必要があります。ただし、その前の段階として、一生この障害と付き合わなければならないという事実を、患者さんと家族さんが理解して現実を受け入れなくてはなりません。新しい生き方を模索するのは、非常に時間がかかることなのです。患者さんや家族さんの、なんとしても治したいという気持ちを尊重しつつも、少しずつ元にはもどれない現実を理解してもらえるように援助していくことも重要なリハビリの仕事なのです。

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