診断名ではなく、「困りごと」でつながる支援を

医療が見極めるべきこと
医療の現場では、失語症なのか、高次脳機能障害なのか、その違いを正確に見極めることがとても重要です。症状の性質が違えば、必要なリハビリテーションのアプローチも異なるからです。病態、つまり体の中で何が起きているのかを正しく評価することは、専門職として決して手放してはいけない仕事だと思っています。
ただ、それとは別のレイヤーで、社会の側に必要な視点があると私は考えています。それが、診断名の違いではなく、「困りごと」に着目するという視点です。
行政の窓口の職員さんが、目の前の人が失語症なのか高次脳機能障害なのかを正確に見分ける必要はありません。「この方は、言葉のやり取りに少し時間がかかる」「ゆっくり、短い言葉で伝えたほうが伝わりやすい」。そのことさえ知っていてもらえれば、日常の困りごとの多くは、きっと軽くなります。
制度の分断が生む「二重の見えなさ」
私が今、一番危惧しているのは次のことです。失語症も高次脳機能障害も、もともと見た目では分かりにくい「見えない障害」です。それだけでも社会的な認知は十分ではありません。そこに加えて、制度が両者を別々に扱っていることで、支援や認知がさらに分断されてしまう。見えない障害が、制度によって、二重に見えにくくなってしまう危険性があるのです。
診断名でなく、困りごとでつながる
私たちが本当に議論したいのは、診断名の違いではありません。当事者の方々が日々どんな困難を抱えて生活しているのか、そのことを社会に知ってもらい、困りごとを解決するという視点から支援を考えていくこと。これが、今、私たちに必要な姿勢ではないかと思っています。
医療は症状の違いを明らかにすることに意味があります。けれど社会に必要なのは、困りごとに着目した、横断的な支援の視点ではないでしょうか。
これから
このテーマについては、今年の学会でも発表を予定しています。オンライン言語リハビリ「ことばの天使」や、AIを活用したことばのトレーニングアプリの開発を通じても、失語症の方だけでなく、高次脳機能障害の方にとっても使いやすい支援のかたちを、これからも探っていきたいと思います。
「同じ」ではない。けれど、確かにつながっている。この視点を、少しでも多くの方と共有できたら嬉しいです。








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