10年かけて社会を変える人は、何を考えているのか

みなさん、こんにちは。言語聴覚士の多田紀子です。
先日、高知県に行ってきました。高次脳機能障害の支援法をつくった方にお会いするためです。
正直に言います。めちゃくちゃ衝撃を受けて帰ってきました。23年この仕事をやってきたつもりでしたが、見えていなかった景色がありました。今日はその話をします。
10年前から、法律を作ると決めていた人
その方は、就労支援の事業所を運営しながら、長年にわたって高次脳機能障害の方々の支援をされてきた方です。
高次脳機能障害とは、脳卒中や事故で脳にダメージを受けた後、記憶や感情のコントロールが難しくなる障害のことです。
「どうやって法律まで持っていったんですか?」と聞いたとき、その方は一切迷わず即答されました。
「ロードマップを書いていましたから」
ロードマップ——つまり、地図です。どの順番で何をして、次に何をして、その時の注意点まで全部書いてあった、と。しかも当時は二人で作ったと言います。「ほとんど表に出せないようなメモ書きレベルですけど」と笑いながらおっしゃっていましたが、私はその話を聞いた瞬間、ゾワッとしました。
10年前といえば、法律なんてまだ影も形もない時期です。それなのに、もうゴールを決めて、逆算して動いていた。
「入れるもの」と「捨てるもの」を決めていた
さらに印象的だったのが、何を「入れるか」と何を「捨てるか」も、戦略として決めていたという話です。
たとえば、失語症——ことばが出にくくなる障害——を法律の対象に含めるかどうか、という議論がありました。「失語症は高次脳機能障害と別で扱うべきだ」という声もある中で、その方は「失語症は当然、高次脳機能障害に含まれる」という立場を一切崩しませんでした。
理由は明快です。社会にとって、失語も高次脳も「ほとんど知られていない」という点では同じだから。認知度が極めて低い状態で細かく分けて戦っても、力が分散するだけだ、という判断でした。
そして、こんな言葉が残りました。
「ロードマップをちゃんと描けないと、大声で言えない」
私もこの仕事をしながら「こうあるべき」と思うことはたくさんあります。でも、10年後のゴールから逆算して戦略を持って動いているか、と問われたら——正直、できていませんでした。
質問に即答できる人は、もうとっくに答えを持っている
高知での一番の気づきは、これです。準備がある人は、迷わない。ぶれない。即答できる。
次回は、その「戦略と理念」の話をさらに掘り下げます。社会を変えるためには、なぜ一貫した軸が必要なのか。ぜひ続けて読んでみてください。








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