言語障害のある人が社会で生きるために必要なこと ― 就労支援としてのコミュニケーション支援

ある方のことが、今も頭を離れません。
退院後、職場に復帰しようとしたけれど、うまくいかなかった。そのまま引きこもりになってしまった。数年後に再会したとき、言語機能もコミュニケーション能力も、退院時よりかなり低下していました。まだ若いのに。
「何のために、入院中あんなに頑張ったのか」
その言葉が、私が起業を決めた原点のひとつです。
言語聴覚士の学会やセミナーでは、退院までの発表がほとんどです。症状分析、プログラム作成、機能改善へのアプローチ。どれも重要です。でも、退院した後の人生は、あまり語られません。
就労支援の現場も同様です。車椅子の段差をどう解消するか、物理的なバリアフリーが中心でした。リモート環境が整ってきた今、身体的なハードルはかなりカバーできるようになってきました。でも、コミュニケーションは置き去りにされたままです。あっても、面接の練習止まり。
でも実際に働き始めてから困るのは、こういうことです。
会議についていけない。
上司への報告がうまくできない。
困っていると言い出せない。
雑談ができなくて孤立する。
疲れると言葉が出なくなる。
面接を突破しても、その先に毎日がある。
そして、孤立すると機能は落ちます。話す機会が減り、社会とのつながりが薄れていく。入院中に取り戻した力が、少しずつ失われていく。
だからこそ、退院後の生活に必要なのは、機能訓練ではなく、生活ニーズに合わせた言語トレーニングだと思っています。
自分に何が起きたか、説明できる。
何に困っているか、伝えられる。
どうしてほしいか、依頼できる。
この力を、社会に出る前に、出た後も、継続して支えること。
それは言語聴覚士が担える、そして担うべき役割だと思っています。
病院の中だけが、STの居場所ではありません。








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