私が10年かけてやりたいことが、見えた

みなさん、こんにちは。言語聴覚士の多田紀子です。
高知シリーズ、最終回です。今日は完全に私自身の話をします。
高知からの帰り、飛行機の中でずっと考えていました。「私は、何がやりたいのだろう」と。
刑務所に入ると、年間400万円
前回も触れましたが、高知でこんな話が出ました。
適切な支援がなく行き場を失った人が、最終的に刑務所に入ることがある。その収容コストは、年間400万円以上。でも、適切な支援があれば防げた可能性がある。グループホームで暮らしながら就労支援に通えていたら——そちらの方がコストも低く、本人も生きがいを持てる。
その話を聞きながら、私の頭には全然別の場所にいる人たちの顔が浮かびました。
養護施設の子どもたちのこと
養護施設とは、親と一緒に暮らせない子どもたちが生活する施設です。
虐待を受けた子、親が病気の子、そして——親自身が発達障害で子育てができなかった子。この「親が発達障害で育てられなかった」ケースが、実はとても多いのです。
こうした子どもたちは、ことばの発達に課題を抱えているケースが非常に多い。うまく話せない、気持ちが伝えられない、人間関係がうまくいかない。
でも、養護施設には言語聴覚士がいません。ことばの支援が届かないまま、子どもたちは育っていきます。
戦後の孤児より、今の施設の子どもが多い
一つ、衝撃的な事実があります。
今、日本の養護施設で暮らす子どもの数は、戦後の孤児の数より多いのです。
戦争が終わり、親を失った子どもたちがあふれた時代——あの時より、今の日本の方が施設で暮らす子どもが多い。にもかかわらず、社会の注目はほとんど向いていません。
そしてその子たちは、18歳になると施設を出なければなりません。ことばの問題を抱えたまま、十分な教育も受けられないまま、一人で社会に出ていく。
その先で、闇社会に足を取られてしまう人が少なくない——これが現実です。
そこに目を向けているSTは、ゼロ
今、日本中で人手不足が叫ばれています。
でも、適切な教育とことばの支援を受けられていたら社会で働けたかもしれない人が、支援が届かなかったために、そうなれなかった。それは本人の問題ではありません。社会がその子たちを見ていなかっただけです。
調べてみると、養護施設の子どもたちのことばの支援に専門家として関わっている言語聴覚士は、ほぼゼロです。
ゼロ。
23年この仕事をやってきて、私もそこを見てこなかった一人でした。でも今は、もう見えてしまいました。見えてしまったら、やるしかない。そう思っています。
すべてがつながった
高知で聞いた「刑務所400万円」の話と、養護施設の子どもたちの話が、私の中でつながりました。
支援が届かない子どもが、支援が届かない大人になる。
早い段階でことばの力を育てることが、その連鎖を断ち切る入り口になるかもしれない。それが国の力にもなる。人手不足の解消にもつながる。
でも何より、その子たちが自分の気持ちをことばにできる人間として育つこと——それが一番大切だと思っています。
これが、私の10年のテーマです。
おわりに
高知で会った方は、10年前から地図を持っていました。私は、今日からその地図を描きます。
養護施設の子どもたちへのことばの支援——そこに、言語聴覚士として最初に踏み込む人間になろうと思っています。
4回にわたってお読みいただいた高知シリーズ、ありがとうございました。








LEAVE A REPLY