脳がとにかく疲れる、つられて身体も疲れる『易疲労』
おはようございます。言語聴覚士の西村紀子です。この記事では見えない障がいと言われる『高次脳機能障がい』・『失語症』についてお伝えします。ご本人・ご家族・言語聴覚士を始めとする支援者の方が少しでも生活における困りごとと背景について理解することができるよう書いていきます。
もっと着目されても良い『易疲労』
社会的行動障害には書かれていませんが、社会的な行動を阻害する訴えとして「脳が疲れる」というのもよく聞きます。この本によると最も多い訴えだとか。
これは当事者インタビューでもよく聞きます。いつもあくびをしているとか、話の途中からもうだんだん「何だろうこれ」みたいな感じでついていけない。視点が合わなくなるとか、表情がボーッとしてしまうとか。脳だけでなく、身体まで芯から疲れてしまうと、もう座ってるのもしんどい。なのですぐに横になって寝たいとか。
私たちも、体調がいまいちだったりすると、朝なんとか起きてもすごく眠くなるとか、頭がぼーとしてぜんぜん働かないなみたいなときありますよね。それのもっと酷い疲労感が、それこそ日々襲ってくると言います。一見、こういう症状を見ると、「なんだ、あの人やる気ないじゃん」と思われがちなんですが、本人は、頭を働かせようと、一生懸命頑張ってるんですね。当事者から言わせると、最大限の力を出そうとしてるんだけど、こういった状態になっているのです・・いうことがあります。
もう一つ、大きな悩みとして、失語症とはまた別ですが、コミュニケーションが難しくなります。ぱっと言われたとき、とっさの言葉がでない、これが最も多い悩みです。症状とあわせて整理すると、
- 注意障害があると、もうあっちこっちあちこち話が飛んでいって、聞き手は何がいいたいことかわからない。
- 記憶が低下していると、話してる途中で何を言いたかったのか、何のやり取りだったか忘れてしまいがち。
- 遂行機能障害があると、きゅっと要素をまとめて必要なことだけを述べる、論理だてて述べる、わかりやすく文章を構成するが難しくなります。
聞くについても、相手の話がすごく早いと途中で理解が追い付がない。周囲の雑音が大きかったりすると、聞き取れない。会話が複数の人になると、注意をあちこちにふることができなくなるので、同じ人ばっかり集中して聞いていたら、話が全然違う話になってたみたいなことがあもあります。
最も大変なのは、自己認識の障害というか、自分で自分がわかりにくいんですね。自分で自分の事を知ると言うのは、高度な脳機能を要します。別に病気や怪我しなくても、私達、いわゆる健常と言われている人でさえ難しいですよね。なので高次脳機能障害の方は、
- 自分の身に一体何が起こっているのか。
- その起こった原因、背景にある症状が何なのか。
これらの気づきが難しいのです。そこへきてこのコミュニケーション障害が重なるわけですから、自分の障害について相手が理解できるようの説明すると言うのは至難の業。せっかく周囲に理解がある人がいても、自分で「私はこれが苦手で、これはできます」「これを手伝ってほしい」など説明しにくいので、周囲の人も、この人に何をしてもらったらいいんだろう?とか仕事の割り振りを悩みます。コミュニケーションが難しいということは、結局、周りに誤解されやすいという2次障害がついて回ってきます。
症状はいろいろですが、結局、高次脳機能障害ってのは社会生活が難しくなる障害なんですっていうことを覚えていただければいいと思います
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