高次脳機能障害者の社会復帰で問題になる「社会的行動障害」とは
おはようございます。言語聴覚士の西村紀子です。この記事では見えない障がいと言われる『高次脳機能障がい』・『失語症』についてお伝えします。ご本人・ご家族・言語聴覚士を始めとする支援者の方が少しでも生活における困りごとと背景について理解することができるよう書いていきます。
社会生活が困難になる情緒と行動の問題
これまでは、注意の機能が障害されるから注意障害、記憶の機能が障害されるから記憶障害となっていました。しかし、社会的な行動という脳機能はありません。もろもろの情緒や行動パターンによって、社会的な行動が難しくなるものを、ざくっとまとめて社会的行動障害といいます。症状は、いろいろなんです。人によって、以前のように意欲が出ないとか、子供みたいなっちゃったとか、やたらとイライラがおさまらないとか、これ欲しいと思ったらすぐ欲しいというふうに抑制が効かないとか、こだわりが取れないとか、ま、とにかく、「これでは社会生活が難しいね」という症状はすべて入ります。
イライラ、怒りが収まらない易怒性
特に高次脳機能障害者が、社会復帰するさいに問題になるのは、怒りが収まらない、イライラがおさまらないとか、一度怒っちゃったらそれが止まらないとか、そういった易怒性です。
前頭葉の抑制機能が低下していることで起こると言われて、周囲の人からみると、「我慢ができないんだなあ、抑制がきかないんだな」っていう印象を持たれます。でも、高次脳機能障害の当事者の話を聞くと、自身は怒りを抑えようとして、一生懸命に努力をしているそうです。だけどそれでも、いらいらや怒りが漏れ出てしまう。そして、一度怒りスイッチがはいると、「やめろ」と心で叫んでいても止まらないそうです。
易怒性といわれると、なんかやたら怒りっぽいだけというイメージがありますが、どうでしょう。高次脳機能障害者の話を聞くと、ちょっと印象が変わりませんか?そして、怒りスイッチが入るのは、本人なりの理由があると言われています。単純に「あ、これは、前頭葉機能の低下ですね」と言えないところもあります。あとは情動に関するものなので、扁桃体も関与していると言われています。扁桃体から、うわっとこれまで経験したことがない、怒りの情動が、湧き上がってくるのかもしれません。
高次脳機能障害・失語症の当事者インタビュー
文筆家でルポライターの鈴木大介さんと、毎月2名の取材をしています。こちら過去号のご紹介。ぜひ興味がある冊子をお読みください。
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