あなたにとって、社会にとって、仕事って何だ?〜言語聴覚士のお仕事〜

あなたにとって、社会にとって、仕事って何だ?〜言語聴覚士のお仕事〜
私は、脳卒中、頭部外傷などの脳損傷者のリハビリを担当しています。この数年の関心ごとは
就労支援、社会復帰です。介護保険制度、年金制度、生活保護により、「お金」の確保ができる制度はあります。お金が入って、経済が安定することだけが、果たしてゴールなのでしょうか?
医療リハビリの期間が短縮される傾向にあるなか、とりあえず、経済的安定を図って、「はい、終了」となっていないか?長期間に渡って、取り組むことで、何か就労に繋がる人もいるのではないか?と考えると同時に、なぜ就労にこだわるのか?そもそも仕事ってなんだろうという疑問もわいてきます。
私が勉強会に参加している山口クリニックの山口研一郎先生の著書を読んでいて「これだ!」と腹落ちしたことがありましたので、今日は、ご紹介します。あなたは、この青年に長年のチャレンジと結果をどう感じますか?
当事者本人が20代前半から40代前半と若い場合が多く、本来は就労年齢に属することから、何よりも彼らの希望は「就労」であった。どういった働き方でもいいから、「社会人」としての立場を持ち、一定の給与を保証されることが彼らの夢だった。しかし、そう簡単なことではなかった。彼らを待ち受けている数々の困難を一つ一つ克服し、やっと念願の就労に辿りつけたのは1100名あまりの当事者中、100名弱に過ぎない。
 そのうちのK君が語ってくれた。「僕は、交通事故で怪我をした後、やっとのおもいでアルバイトを始めることができました。もらえる給料は少ないけど、生まれて初めて、自分で稼いだお金でラーメンを食べたりコーヒーを飲むことができます。何のために働いているのかよくわかりませんが、一杯のコーヒーを飲んでいると、ああ働けるようになってよかったなとつくづく感じることができます」 
高次脳機能障害――医療現場から社会をみる
山口 研一郎
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私たちは、公共の福祉に反しない限り職業選択の自由が憲法で保証されています。もちろん、そうそう自分が好きな仕事につくことは難しいのですが、いちお、権利です。基本的には、学業含めて仕事につくために時間と労力を投資しますが、給与として得る「金額は大きい」です。だから社会は成り立ちます。しかし、この青年のように障害をもっている場合、相当の年数と、リハビリや職業訓練などの社会資源を使って、ようやくアルバイトにたどりつく人も少なくありません。給与として得る額は投資した額よりも「小さい」でしょう。それでも「仕事がしたい」という権利を社会が奪うことはできませんよね。社会が投資した金額以上に稼ぐ人がいる一方、金額は少ないかもしれませんが働きたい人は働くことができる社会、そんな個人の意思が尊重される社会の方が、私たち、住みやすくありませんか?「あなたの働きでは、黒字化しない」といって切り捨てられる社会ってどうでしょう?
そして、もう一つ、心に残ったのは「何のために働いているのかよくわかりませんが」というところ。職業選択の自由があまりに主張され「自分が好きなこと、やりがいを感じる仕事をしよう」という意見が多くなっていますが、そもそも、仕事って、やっていくうちに愛着が湧いたりやりがいを感じることも多いと思います。これでないとダメ!って、自ら選択肢を狭めることもないのではないかと、K君の言葉を読んで思いました。
みなさんにとって、社会にとって、仕事って何でしょう?語りつくせないテーマかもしれません。
合わせてお読みください→障害者の職業選択は贅沢?わがまま?
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