頭部外傷による高次脳機能障害No3〜言語聴覚士というお仕事〜
医療と健康、そしてリハビリの情報〜言語聴覚士というお仕事〜本日もよろしくお願いします。
No1,No2に引き続き、大阪医療センター脳神経外科の中島伸先生の講演の報告、テーマは「頭部外傷」です。
社会生活を営むにあたって必要な高次脳機能とは何か?
高次脳機能とは、人間が進化の過程で発達させてきた、社会の中で生きるための機能です。いろいろな分類がありますが、こちらが「生活能力」を見る視点として整理されていると思います。
- 意思疏通能力
- 問題解決能力
- 持続力・持久力
- 社会行動能力
要は、
- 他人とコミュニケーションが行えるか?
- 適切な判断を行い円滑に業務が行えるか?問題に対処できるか?
- 通勤を含めて就業時間に耐えうる体力と集中力があるか?
- 他人と共同して作業が行えるか?社会的行動が取れるか?感情をコントロールできるか?
そして、これすべて「能力」なのです。だから、他人の援助を得るなり、何かしら代償手段を使おうと「できれば」いいのです。そのために重要なのは「本人の障害に対する気づき」と「周囲の理解」だと思っています。
本人の気づきはとても重要!
高次脳機能障害の一つに「病識欠如」というものがあります。自分の障害に気がつきにくいことです。様々な要因があるのですが、主に記憶や遂行機能の低下によって「病前の自分と比べることができない」「周囲の反応に気がつきにくい」「失敗した時に前後の記憶が薄いので、忘れてしまう」「俯瞰して自分を見れない」などがあります。
こちら「高次脳機能障害者が社会復帰する際には,高次脳機能障害の程度だけでなく,自身の障害に どの程度気づいているかが一つの鍵となっている」という書き出しから始まる論文(長野2012)です。
ここにもあるように、障害の程度よりも「障害に気がついて」「援助を求めることができる」は、社会復帰の際にキーとなります。
社会性とは?
上記の4つの能力のうち、「社会行動能力」は最も机上の検査で測定することができないものです。私たちが社会生活を送る上で、何が需要でしょうか?中島伸先生は以下のものをあげていました。
- 無遅刻、無欠席
- 喜怒哀楽のコントロール「仮面をつける」
- 弱点を克服するための工夫
この「仮面をつける」のお話がとても良かったです。障害があろうが、なかろうが、私たちは「職場」「家庭」など様々な場面で、相応の役割を務めています。それを「仮面」と述べていました。
「一歩、病院に入ったら、いつも笑顔でにこにこ!患者、家族はもちろんスタッフみんなに平等ににこにこする!病院をでたらその仮面をはずしたらいい。しかし、院内では仮面をつけ続ける!」
そして
「いつかその仮面が真実の顔になる!」
この言葉に、感動した私です。最初は誰でもプロフェッショナルとは言えないかもしれませんが、こうして、日々の努力で、育っていくものなんですね。とてもいい講演ありがとうございました。
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