「見えない」からこそ、置き去りにされてしまう失語症の困難さ

こんにちは。言語聴覚士の多田紀子です。2026年4月25日は、第7回目の失語症の日記念イベントを開催します。現在、準備中ですので、詳細は少しお待ちください。
さて、失語症のある方の困りごとは、外から本当に見えにくいものです。
今回の記事は、「失語症の日」イベント開催前に、新聞記者の方とお話しした内容をまとめました。
障害者手帳に反映されにくい「言葉のこまりごと」
失語症は、障害者手帳では「身体障害手帳」に分類されています。麻痺を伴う重度の失語症の場合。通院や外出には付き添いが必要なことも多く、生活の大変さは明らかです。言葉の困難さそのものが十分に考慮されていない場面をよく見かけます。一方で、麻痺がなく、言語だけが重度の場合はどうでしょう。
歩ける。身なりも整っている。一見すると「普通」に見えるために、使える社会資源がほとんどない。
これは現場で、何度も直面してきた現実です。
「軽いから大丈夫」と言われてしまう人たち
特に支援からこぼれ落ちやすいのが、軽度失語症のある方です。日常会話はなんとか成り立つ。だから周囲からは、「もう大丈夫ですね」「仕事に戻れてよかったですね」
そう言われることが多い。でも、実際にはここからが本番だったりします。
- 会議の内容が追えない。
- 資料を読むのに、人の何倍も時間がかかる。
- 言いたいことがまとまらず、発言のタイミングを逃してしまう。
学生さんであれば、
- 授業についていけない
- 試験問題の文章が理解しきれない
- クラスメートとの雑談に入れない
そんな困りごとが、静かに積み重なっていきます。
それでも、相談できる場所がないし、利用できる制度もない。そして、「困っていること自体が、分かってもらえない」ここが一番つらいところかもしれません。
若い世代ほど、孤立しやすい
学生さんや若年層の方から、こんな声をよく聞きます。
「自分と同じ失語症の人がいるのか分からない」「他の人は、どうしていますか?」
当事者同士が出会える場や、経験を共有できる場所は、驚くほど少ないのが現状です。同じ悩みを抱えている人がいると分かるだけで、少し楽になることもあるのに、そこにつながる道が、ほとんど用意されていないのです。
制度は始まった。でも、まだまだ届いていない
失語症意思疎通支援事業も、全国で少しずつ始まっています。とても大切な取り組みだと思います。
ただ、現在のところ、支援者を養成するところで止まってしまい、実際に困っている人と、どうつなぐのか
その仕組みがまだ弱く、結果として、「制度はあるのに、使われていない」そんな状態が続いています。
失語症は「気持ちの問題」ではありません
失語症は、メンタルの問題ではありません。脳の障害です。話すだけでなく、
読む、書く、聞く、計算する、こうした複数の機能が、同時に影響を受けることがあります。
だからこそ、本人の努力だけでどうにかなるものではありません。
特別な優しさはいらない。少しの工夫でいい
根っこにあるのは、社会全体が、失語症を正しく知らないことだと感じています。必要なのは、過剰な配慮や同情ではありません。
- 話す速度を少し落とす
- 一文を短く区切る
- 文字やイラストで補う
- 言葉が出るまで、少し待つ
それだけで、失語症のある方が「社会に参加し続けられる可能性」は、大きく広がります。言葉のバリアフリーを、特別なことにしない。それを当たり前にしていくことが、これからの社会には必要なのだと思います。
お知らせ
2026年4月25日(土)第7回失語症の日記念イベントを開催します。
今年は、テツ&トモさんが歌う「おんどくドクドク」が、応援キャンペーンソングとなりました。
https://youtu.be/CyeDsct7LOw?si=PirMxlv9-JKa1ATp
踊りはこちら!
https://youtu.be/1LJAJatfqF8?si=m2_mdk8DZXjtkarx








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