多様性ある社会は、1人1人が作っていくもの
私は、病院に勤務しながら、ある患者さんの本を出版しました。こちらがその本です。患者さん達に対して差を付けることは本位ではありませんが、私はこの本に関してはどうしても世の中に出したいと強く思ったのです。
ちょっと変わっている息子を受け入れてくれた社会
私の息子、今は成人しましたが、小さい頃から言葉は達者なのですが、図工ができないなどの苦手なこともあり、また、とにかくよく道に迷う子でした。私は言語聴覚士だったので、息子のことには「あ、これだな」と早くから気がついてたのですが、それを苦痛に思うことはありませんでした。それは、私たちの周囲に居た人達が、息子をしっかりと支えてくれたからです。
息子ができないことは、息子の友達が助けてくれました。宿題も手伝ってくれました。何より、学校の先生が理解者になってくれ、支えてくれました。また、ご近所のお母さん達が面倒を見てくれたのも嬉しかったです。息子の障害のことをカミングアウトできたのも、それを受け入れてもらえたのも、私の周りの社会に受け入れる心があったからだと思います。普通に大学生活をエンジョイし、趣味の吹奏楽だ、アルバイトだ、あちこちで歩いています。あんなに迷子になっていた息子が、成長したものです。
多様性のある社会で障害を受容してほしい。
今の日本は、患者さん本人や家族が「障害があると受け入れてもらえないのではないか」と不安を感じていることが多い気がします。
脳損傷の後遺症が残った場合、それが目に見えない「失語症」や「高次脳機能障害」である場合、復職する前に、職場に伝えるかどうか、ほとんどの患者さんは悩んでいます。障害者であることを隠したり、引きこもったりする家族がいるのも、周りに受け入れてもらえないのでは、という不安がそうさせているからかもしれません。
妊婦さんが障害児を妊娠することを恐れたり、認知症の両親を家から出さないようなしたりすることもありますよね。そしてそういう悲しい社会を構成しているのも、また私たちひとりひとりでもあるわけです。
最近は、色々な診断が付くようになり、障害者の数は増えています。新たにカウントするようになった障害もありますし、実際、生活習慣病が原因の脳損傷、交通事故による脳損傷は現代になって増えています。そうして実際、私たちの周辺には、何らかの障害を持った人、何らかのマイノリティな問題を抱える人が多くいます。そして、これは是非とも強調したいのですが、後天的である障害も多くありますから、いつ、誰が障害者と言われる立場になってもおかしくないという時代であるとも言えます。
でも、これは、はっきりお伝えしたいのですが、これまで「障害者なんて別の世界」と思っていた人こそ、ご自身が、または家族がそうなった時の、ショックは大きいのです。全く知らない世界を突き付けられた感覚なのだと思います。まして、差別感情が強かった人は、言わずもがなです。
関心があった人は、「あ、そういえば」と、既知感があるためか、落ち着いている人が多いようです。少しでも、多くの人に脳損傷の病気と、後遺症について知って頂きたいと願っています。
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