「希望をつなぐ」大切さについて~高次脳機能障害・失語症の方の当事者インタビューより~
ルポライターの鈴木大介さんと、高次脳機能障害・失語症の方を対象にインタビューをして、冊子を毎月発行しています→「脳に何かがあったとき」
今回は、こちらです。
医師の一言で光が
かつて重度の高次脳機能障害者を介護している家族さんに、「私たち医療者に何を希望しますか?」と聞いたことがあります。答えは
でした。今回の取材で、心にぐっと来たのは「希望をつなぐ」ことの大切さです。高次脳機能障害とは聞いていなかったHさん、未診断と言えるかもしれません。彼が主治医から言われたのは
「脳は回復していくんだよ。脳の他の部分が代償していくから。できていたことができなくなる、できなかったことができるようになる、どれも治っている証拠」
という言葉でした。これを聞いたHさんは、
「左の脳がダメになったから、右の脳を鍛えたらいいのか」
と、右脳を活用するあるメソッドで脳を鍛え始めます。もし「障害が残ったよ」だけと言われていたら、落ち込んで、何も手につかなかっただろうなとも言います。あれは未診断でなく、後遺症があると知っていて、うまく導いてくれたのだなと。
同じ症状を伝えるにも、どのような言葉を使うかがいかに重要か、お話を聞きながら感じました。医療職は、予後予測という名前のもと「ここまでしか回復しません」と宣言してしまいがち。発症、受傷してたかだか数日の急性期の段階で「復職できませんよ」と言われ、ショックのあまりご飯も食べなくなった患者さんの話を、少なからず聞きます。これではリハビリどころではありません。脳が自然回復する時期にも関わらず、甚だしい機会損失です。患者さんがもつ回復する力を信じていないのであれば、むしろ、リハビリなんて不要なのではないかとさえ思ってしまいます。治るよという言葉、希望を与えることがもたらす力について、考えたいと思いました。
脳は鍛える事ができる!
そして右脳を鍛えることで「頭の使い方が変わった」というHさん。受傷前はロジカルな思考が得意であったけれども、今はアイデアがひらめくようになった。記憶もイメージを使って記憶する癖がついた。低下した機能の回復を図る、代償手段を獲得するとは少し違う視点が興味深かったです。できなくなったことを直視するのは、精神面でも負担が大きいです。「できないことに否が応でも直面することになる」リハビリの辛さはよく聞きます。しかし、損傷していない、低下していない機能を鍛えるのは、モチベーションも上がりそうです。夢中になりやすいゲームアプリなども、これだけ手ごろなものがたくさんあるのだから、もっと活用したいものですね。
最後になりますが、実はこのHさん、以前にもお会いしたことがあるのです。その涙ぐましい努力の日々にとても驚いた気持ちでブログを書きました。あの時から3年たっていますが、今でも継続しているとのこと、あ‥私って、こんなに長く、そして一生懸命、何かに取り組んでいるだろうか?と、反省です。
おしらせ
冊子についてはこちら→脳に何かがあった時
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