感情の抑制が利かない〜高次脳機能障害者の声なき声〜
こちらの当事者の手記をもとに記事を書いている「高次脳機能障害者の声なき声」です。今日は、大阪市内で交通事故被害者家族ネットワークの支援集会に参加してきました。やまぐちクリニック院長である山口研一郎先生の話でも、この「感情抑制」について話題に上がっていました。感情抑制ができないことは、周圍の人も当事者も大変苦しむ社会的行動障害です。
病気に倒れて約7年以上経った。相変わらず助詞ができなくて、処理速度も遅いままだった。僕の生きがいは子供たちの成長だった。4人とも順調に育ってきた。僕は子供たちに大変満足している。本当に自慢の子供たちだ。もちろん7年間面倒みてもらっている嫁に感謝をしている。感謝しても感謝しきれない。今回、このテーマは本題です。高次機能障害の1番の特徴は抑制が効かないことです。僕は会社では1度も怒ったことをありません。嫁ともあまり喧嘩しなくて、どちらかと言えば穏やかに生活をしていました。あれは忘れもしません。ちょっとしたことが妹と口論になり、そこら中、暴れまくってパソコンを1台壊しました。そうしたら事務員さんがびっくりして部屋の中に入ってきて必死に制止しました。僕はなぜこんなことをしたのだろうと思った。その後、ものすごく罪悪感でいっぱいだった。おとなしくしばらくの間落ち込んでいた。僕は訪問リハビリの先生に事情を説明した。先生は「脳出血になる人はよくあることですよ」と言った。僕は原因がはっきりしてほっとした。これから気をつけようと思った。次は気をつけていたらいいかと、そう心配していなかった。ところが何度も何度も起こしてしまった。またやってしまった、そのたびに後悔してしまった。今度こそはもう絶対に怒らないでおこうと思ったが、またやってしまう。もうこれは本当に病気だと思った。そのために自分で反省して、責めた。もういい加減、自分自身に嫌になってきた。高次脳機能障害になって、何度も何度もなかなか出来ない課題をクリアしてきたのに、それなのになぜこんなこと起こるのだろう。そのたびに嫁に迷惑をかけてきた。一体、何度、傷つけてきたのだろうか。数え切れない。いつも完全に治る薬がない、てんかんもだ。これだけ医学が発展しているのに、本当に僕はついてない。悪い方向にいつも傾いている。この悔しさはどこにぶつけたらいいのだろう。結局、自分自身の責任である。何もかも、ものすごく虚しく感じる。もう今回は絶対やめておこうとする、けれどもまた同じ繰り返しだ。なぜ僕が、なぜ僕がこんな病気に、そうおもうと諦めても諦めきれない。
山口先生の講演でも、この抑制が利かない(衝動性、易怒性)について話がありました。通常、人間の理性を司る前頭前野という部分が、感情を司る大脳辺縁系をコントロールしています。しかし、前頭前野の機能が低下すると、このコントロールが不良となり、感情を爆発させやすくなります。そして、悲しいことに身近な人に矛先が向かいやすい・・つまり、家族、特に配偶者です。
こうした症状については
- 一呼吸おく練習、コツを身につける。例えば場所を離れる、携帯などをいじるなどが有効です
- タイムアウトといって、一人になって考える時間を設ける。できれば何が起こって自分がどう行動したのか記録をする。書き出すことで、記憶に定着させることができます。
- 時には薬物療法も必要(これ、当院では漢方薬を使用しています)
もうひとつ、わたしが大事だと思っているのは
- 家族さんに「これは病気がさせていることで、本人、もちろん家族も全く悪くない」ということをはっきりお伝えすることです。
怒鳴られたり責められることが続くと、家族さんは「自分の接し方が悪かったのか?」と悩むことが多いからです。社会や家庭に復帰するに際して、最も問題となるのがこの感情抑制なのです。
LEAVE A REPLY