沼尾ひろ子さんの講演〜第1回失語症の日イベント開催に寄せて

沼尾ひろ子さんの講演〜第1回失語症の日イベント開催に寄せて
4月25日失語症の日のイベント報告。今日は、講演を快諾してくださった沼尾ひろ子さんについて。今はアナウンサーで活躍しながら、失語症の方の経済自立を目指し、ブルーベリー農園などを作ったり、ボイストレーニングを行なっています。

流暢すぎるのはわかっていた

今、沼尾さんは「この方、失語症なの?」と思われるほど、流暢にお話をされます。沼尾さんに依頼することに関して、これほど流暢に話す人が失語症だというと、失語症の症状を勘違いされないか、などの声があったのも正直なところです。
それでも、お願いしたのは、一見、何の問題もなさそうに見える彼女が、これまで、そしてきっと今も、どれだけの努力をしているか、そこに失語症の方の見えない困り事があるということをお伝えしたかったからです。
回復したように見える失語症の方々の多くは、会話や仕事での話が普通にできるよう、非常に努力されています。だから、少しだけゆっくり話す、たたみかけて話さないなど、こちらに小さな気遣いがあれば、相手はかなり楽になると思っています。

言語聴覚士として心に響いたこと〜相手によりそう

この日の講演では、心に響いたことが3つあります。
1つは、担当した言語聴覚士さんがSLTAと言う失語症の検査をしたときのこと。
沼尾さんが「こんなことに答えなきゃいけなくなったのか……」と情けなくなり、涙を流したときに、
「沼尾さんには、これはいいかなぁ」と言ってその検査を下げ、翌日、アナウンサーが使う言葉のドリルを持ってきたんだそう。
もちろん、その言葉のドリルはとても難しいのですが、沼尾さんにとっては「チャレンジすべき山が見えた」とのこと。
また、がんばりすぎる沼尾さんに、「がんばりすぎないでね」と声をかけたとのこと。このバランス感覚、素晴らしい!と同業者として感動しました。
当たり前ですが、私たち言語聴覚士は、相手によって何をするのか、相手にとって何を優先すべきか、考えないといけません。
沼尾さんを担当した言語聴覚士の方は、杓子定規の評価をするのではなく、患者さんの尊厳を大切にし、一番やる気スイッチが入る教材を用意しつつ、でも、きっと頑張りすぎるだろうからそこもフォローするという、目の前の患者さんの気持ちに寄り添ったとてもすばらしいセラピストだと思います。

可能性を信じる

2つめは、職場の人にご挨拶に行った時に「プロとして戻ってくるんだろ?」と言われ、その言葉が何よりも嬉しかったとのこと。その言葉を胸に、相当の努力を積み重ねていったそうです。
私たち医療者は、ついつい、無意識のうちに「この人は復職できない」と決めつけていないか? 考えさせられました。特に、患者さんの仕事が、専門性が高い職業だと、早々に見切ってしまう傾向があるのではないか、その人の可能性を小さく見積もっていないかと、改めて思いました。
実は私も、昔、右手が麻痺になったデザイナーの方を担当しました。作業療法士さんだけでなく、私たち全員、復職は当然無理だろうと思ったのです。ところが、その方は、左手で描き始めたんですよね! そして、何年も経って、どんどん、どんどん上手になって、ついにお仕事に至ったのです。医療者が全員「無理だろう」と思っていたのに対し、家族さんはずっとずっと、最初から復帰すると信じて、寄り添っていたいたのですね。改めて機能回復の見込みとか、予後予測と言う事について考える機会をいただきました。
確かに、この辺りは、その人の性格とか環境とか、様々な要因があるので、一概にそうだと言えない、非常に難しいものではありますが、心に留めておこうと思いました。

役立てる喜び

3つめは、社会的なかかわりについて。発症後、沼尾さんが、ご自宅で鬱々とした日々を過ごしていた時のこと。ある日、お母様に、朗読の練習会に誘われました。その日は発表会の予行練習でしたが、1人がお休みしたため、沼尾さんは代役を振られました。短いセリフだったので言えるかなと思って引き受けたものの、アナウンサーの仕事を初めてした時よりも緊張(ここも、私はずしっと心に来ました)そして、ちゃんとセリフが言えたのはもちろん、周りの人が「ありがとう」と言ってくれたのが、とてもうれしかったと。
やっぱり私たち人間は社会性動物だから、何か人のために役立つということが本当に嬉しいものですよね。何かができるということよりも、何かお役に立てたということが何倍も嬉しい! だからこそ失語症の方の社会参加っていうのは、ほんとに大事なことだと改めて思いました。

最後に

今回の沼尾さんの講演は、言語聴覚士として、本当の意味での支援とは何か?を考えるきっかけとなりました。
沼尾ひろこさん、このたびはどうもありがとうございました。
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