言語聴覚士は発音練習だけではない ― 社会参加と意思決定を支える支援

「言語聴覚士」というと、多くの方は嚥下障害、つまり「食べる・飲む」の支援をイメージされると思います。
実際、日本の言語聴覚士の約8割は病院や介護施設に勤務しており、業務の多くを嚥下障害が占めています。だからこそ、「しゃべれているし、食べられているなら不要」という判断が生まれやすい。
でも、本来の言語聴覚士の役割は、もっと広いところにあると思っています。
たとえば、こんな困りごとがあります。
自分に何が起きたのか、説明できない。
何に困っているのか、伝えられない。
どうしてほしいのか、言えない。
自分の気持ちや意見を、表現できない。
これは「単語が言えるかどうか」の話ではありません。文が作れるかどうかでもない。
言語機能が回復していても、これができない方はたくさんいます。逆に、発音が不明瞭でも、語彙が少なくても、ジェスチャーや文字や機器を使いながら、自分の状況を伝えられる方もいます。
「話せる」ことと「伝わる」ことは、違います。
そして、困っていると伝えられなければ、支援は始まりません。自分に何が起きたか説明できなければ、必要なサポートにつながれません。
つまり、「伝える力」の土台がなければ、社会とつながることができない。
言語聴覚士は、その橋を架ける仕事でもあると思っています。
発音訓練でも、嚥下リハビリでもなく、
その人が社会の中で、自分の意思を持って生きること。
困ったときに助けを求められること。
自分のことを自分で伝えられること。
それを支えることが、地域で働く言語聴覚士の、大きな役割だと思っています。








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