「言葉が出ない」だけじゃない〜失語症者が日常で直面している3つの壁〜

「失語症」と聞いて、多くの方は「言葉が出にくくなる障害」とイメージされるかもしれません。でも実際には、その影響は日常生活のあらゆる場面に及んでいます。
今年の失語症の日記念イベントで実施したアンケートには、当事者・ご家族・支援職の方々から多くのリアルな声が集まりました。そこから見えてきた、3つの「壁」をご紹介します。
壁① 「伝えたいのに、言葉が出ない」コミュニケーションの断絶
考えていることは頭の中にある。でも、言葉にならない——。
これが失語症の最も中心的な困難です。特に電話や対面での会話ではパニックになりやすく、「横柄な人」「無愛想な人」と誤解されてしまうこともあります。
アンケートには、こんな声がありました。
「家族の早口な会話についていけず、家庭の中で疎外感を感じる」
「電話対応中に心無い言葉を浴びせられたことがある」
かつての友人関係が薄れていった、という声も少なくありませんでした。コミュニケーションの断絶は、社会的な孤立へとつながっていきます。
壁② 「見た目が普通」ゆえの無理解と孤立
失語症は外見からはわかりません。そのため、周囲から誤解されやすいという特有の苦しさがあります。
「努力が足りない」「言い訳している」と思われる。認知症と間違われ、知的能力を過小評価される。意思決定を軽んじられる——。
アンケートの中で特に多かったのが、「何も考えていない人と思われることが一番つらい」という声です。
考える力は保たれている。ただ、言葉という出口が閉じているだけなのです。
壁③ 「情報の速さと多さ」についていけない社会環境
現代社会は、情報があふれています。駅のアナウンス、スマートフォンの通知、二段階認証、グループLINE……。健康な方には当たり前のことが、失語症者にとっては大きな壁になります。
「一度に多くのことを言われると処理が追いつかず、社会から取り残された感覚になる」
「矢継ぎ早のアナウンスや複数の情報を同時に提示されると、脳内での整理が追いつかない」
情報処理の困難は、外出への不安や社会参加の縮小へとつながっていきます。
「障害」は個人の中だけにあるのではない
3つの壁に共通しているのは、その多くが「社会の構造」によって生まれているということです。
ゆっくり話してもらえる環境があれば。視覚情報が整備されていれば。「待つ」という文化が広まれば——当事者の方々の生活は、大きく変わるはずです。
次回は、当事者・ご家族が求める「社会への提案」をお伝えします。








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