自分が、または家族が口からものを食べられなくなったらどうしますか?No2〜言語聴覚士のお仕事〜

自分が、または家族が口からものを食べられなくなったらどうしますか?No2〜言語聴覚士のお仕事〜

前回、口から食べられなくなった場合に人工的に水分や栄養を補充する経管栄養法について、そして、その一つである胃瘻について誤解が生じている事実について書きました。今日は、なぜそのような誤解が生じてしまったのかについて、私の意見を書いてみたいと思います。

摂食嚥下障害になる原因や、状況は様々です

混乱が生じていている原因の一つに、どのような人を胃瘻造設の対象とすべきかの議論がなされないまま胃瘻という手技が広がったことがあると、私は考えます。口から食べられなくなった原因や状況は様々ですが、私は大きく以下の3つの項目「食べられなくなった原因」「回復の可能性の有無」そして「本人の意思確認ができるかどうか」で分けられると思います。食べられなくなった原因は、病気と、加齢に分けられます。それぞれにおいて、回復が見込める、または困難である場合があり、さらに、本人の意思が確認できる、またはできない場合があります。

病気の例で言えば、回復が見込めるものでは脳卒中があります。一時的な麻痺によって食べられなった場合で、本人の意思疎通が可能であれば「胃瘻をして、食べるリハビリをしたい」と望まれた場合、胃瘻を作ることに反対する人はいないでしょう。回復が困難な病気としては、末期癌やALSなどの進行性疾患があります。徐々に食べることが困難になり、体力が消耗していきますが、ここで本人が胃瘻によって栄養を補充してほしいと希望すれば、ほとんどの人は胃瘻をつくることを納得されると思います。

加齢の例で言えば、回復が見込めるものでは低栄養や筋力低下があり、こちらについては、最近話題となっているサルコペニアが当てはまります。栄養管理と筋トレにて、再び食べられることが多く、低栄養の改善のために一時的に栄養補充が必要ですが、胃瘻を作る必要はあまりないと考えます。一方、回復が見込みにくいものとしては、他の疾患を合併しているなど、全身状態が不安定な場合があります。また認知症によって、食べ物がわからない、拒食があるなども、回復が見込みにくいです。そして、認知症が進めば、本人の意思確認はほとんどできません。本人が、胃瘻を作って生命を長らえることを望んでいるのかどうか、残念ながら私たちにはわからないのです。

食べられなくなったらどうするのか、死生観を含めて社会全体で考えていきたい

 

医療と介護の向上に伴い、日本は世界で稀に見るスピードで高齢化社会を迎えました。従来であれば、畳の上で老衰によって自然に亡くなっていたであろう高齢者が、栄養を人工的に補充することで、生き永らえることが可能となりました。生物学的な死を迎えるまでの平均寿命と、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である健康寿命の差は、男性で9年、女性で12年の差があり、私たちは何年間も寝たきりの生活をおくる可能性が高いのです。健康寿命と平均寿命についてはこちらをご覧ください。

 

世界に類を見ない超高齢化社会に日本は確実に突入するなかで,日本人にとって豊かな生と死は何なのか,日本人にこの難問が投げかけられている.高齢者に限っては, 少なくとも従来の生存期間を伸ばすことが医学の絶対的なゴールではない.しかし,長く生きられて QOL の向上も期待できるのに,最後の悲惨さを憂慮して,最初から生を放棄するのも合点がいかない

胃瘻栄養の適応と問題点 鈴木 裕

 断片的な情報だけで胃瘻という医療行為の是非を問う前に、胃瘻をする対象者の状況は様々であることを前提に、死生観を含めて「食べられなくなったらどうするか」社会全体で考えていく必要があるかと思います。そして、医療職は、本人や家族が理解して、納得がいく選択ができるように、どのような人に胃瘻が適応であるのか、胃瘻をしたらその後はどうなるのかなどの情報をしっかりと伝え、援助することが必要だと考えます。

 

 

 

 

 

 

 

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