自分が、または家族が、口からものを食べられなくなったらどうしますか?No1〜言語聴覚士のお仕事〜
脳卒中や神経・筋肉の進行性疾患などの病気、または認知症や加齢による筋力低下など様々な理由で、必要な食物や水分を口から摂取することが困難になることを摂食嚥下障害といいます。この障害になると、栄養摂取量が減って衰弱するリスク、または、本来であれば口から食道を通って胃に入るはずの食物や水分が、気管を通って肺に入って誤嚥性肺炎を発症するリスクが高くなります。摂食嚥下障害になった場合、人工的に水分・栄養を補充( AHN :artificial hydration and nutrian)するのが一般的です。
経管栄養法の方法は、この4つがあります
その方法には、流動食などをチューブから消化管に流し込む経腸栄養法と、血管に栄養製剤を直接いれる消化管を使わない静脈栄養法があります。
経腸栄養法には
- 鼻からチューブを入れる経鼻経管法
- 手術をしてチューブを通す穴を胃にあける胃瘻(いろう)、または腸にあける腸瘻(ちょうろう)
静脈栄養法には
- 細い静脈から栄養製剤を入れる抹消点滴
- 太い静脈から高カロリーの栄養製剤を入れる中心静脈栄養法
があり、それぞれ、メリットとデメリットがあります。詳細についてはこちら介護インフォメーションをご覧ください。このうち、今回は「胃瘻」について考えたいと思います。
胃瘻にはこれだけのメリットがある
胃瘻は1980年代に欧米で広がった手技です。日本では「手術が簡便である」「在宅や施設で管理がしやすい」ということで、主に高齢者に対して2000年ごろから急速に広がっていきました。衛生管理が行き届いている日本では、胃瘻を作ったあとの生存率が高く、このことが逆に「回復の見込みがない寝たきりのひとを増加させている」と、問題視されるようになってきました。そのため、現在、胃瘻造設件数は、減少傾向にあります。こちらリハ医の独白ご覧ください。
しかし、病気によって摂食嚥下障害となった方にリハビリを行う立場から言えば、胃瘻には、鼻からチューブを入れる経鼻経管法に比べ、身体的精神的な苦痛が少なく、食べるためのリハビリがしやすいという最大のメリットがあります。回復が見込める人であれば、食べるためのリハビリを進めるために、一時的に胃瘻を作るということ選択肢もあります。胃瘻を作ったあとに、リハビリを経て、口から食べられるようになれば、その後、胃瘻を閉鎖するということもできます。回復が見込めない進行性疾患の人でも、だんだん口から摂取できなくなる栄養量を確保する手段としては、胃瘻は本人と介護者の負担が少ない方法です。必要栄養量を摂取することは、進行性疾患の人が、口から食べ続けるだけの体力や筋力を、少しでも長く維持するために重要なことです。
にもかかわらず、最近は、家族に胃瘻の説明をすると「食べられなくなる、寝たきりになるのが嫌だ」と、拒否をされることが増えてきました。なぜ、本来は食べるために開発された優れた栄養補充法である胃瘻が、口から食べることができなくなる原因であると、誤解されているのでしょうか。私なりに考えてみました。次回に続きます。
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