障害者と同様に、支える家族の支援がほしい〜言語聴覚士のお仕事〜

障害者と同様に、支える家族の支援がほしい〜言語聴覚士のお仕事〜

どんな疾患であれ身体に障害があり介助や援助が必要な人や、または高次脳機能や精神疾患のように身体に麻痺はないけれども日常生活が難しくなる人の場合、当事者には、医療保険、介護保険、自立支援法など、公的なサービスや法体制が整ってきました。しかし、家族支援について、公的な支援制度はほとんどありません。そもそも障害者の家族の負担について、私たちは障害者に対してと同じくらい真剣に考えたことがあるのでしょうか。今日は家族支援をテーマに書いてみたいと思います。

障害を持った方の家族に対する公的サービスはあるのか

障害者が在宅で暮らしていけるかどうか、そこは家族の存在が非常に大きいものです。私は、家族がすべてを負担すべきだとは思いません。独居の人でも在宅で生活できるような支援が必要ですし、たとえ「家族で介護します」という場合でも、負担をなるべく軽減する必要はあると考えています。現在、数日間だけ家族から離れるレスパイト入院やショートステイ、または、日中だけのデイサービスなど通所サービスはありますが、基本的には一緒に暮らす家族に自由な時間を持ってもらうという主旨ではないかと思います。しかし家族に自由な時間さえあれば、負担軽減はなされるのでしょうか。さらには、離れて住んでいて、介護や何かしらの援助をしている家族に対しての支援はあるのでしょうか?

在宅生活のプランが、家族への過剰な負担になっていないか?

以前、在宅診療医のお話を聞いたときに「病院のスタッフは、退院するときのプランを当事者寄りで考えがち。在宅生活を継続させるためには、当事者だけでなく家族全体のバランスを考えなくてはいけない」と言うお話を聞きました。

この先生のお話についてはこちら→継ぎ目のない連携に必要な、たったひとつのこと〜言語聴覚士のお仕事〜

私が専門とする嚥下障害者について例をあげます。入院中は胃瘻で水分や一部の栄養を補給しつつ、ミキサーをかけた嚥下食を毎食少しでも介助で食べていたとします。
しかし自宅ではどうなるでしょうか。介護する家族がたった一人の場合で、しかも介護する側も高齢である老老介護の世帯はとても多いのです。介護者が毎食ごとにミキサーをかけて嚥下食を作り、30分も介助して食べさせるという生活は、嚥下障害の当事者にとってはいいかもしれませんが、家族には非常に負担が大きいものとなります。こうした場合、せっかくリハビリをして3食を口から食べることができるようになったのだからと、家族に一方的に押し付けるべきではないと考えます。現実的なところ、例えば、3食介助が無理だとしても1食だけでもミキサーをかけて介助できないか、またはヘルパーさんのサービスを利用できないか、またはレトルト食品や宅配サービスを利用するなど、家族が負担のない形で自宅での生活プランを組む必要があります。

極端な話、「ベッドで寝たきりのままの状態でいる方が、歩き回っているよりも家に連れて帰りやすい」と言う家族だっているのです。転倒したら起こせない、または転倒がこわくて目が離せないなどという、その家族ならではの事情があるからです。
どんな形だったら自宅に帰れるのか、家族の介護力を考慮して在宅生活のプランを立てることは、とても大事なことです

家族の精神的負担、孤独感への支援はあるのかどうか

もう一つ家族さんの介護負担を大きくさせるのは、精神的な負担、孤独感ではないでしょうか。介護に時間を取られると、家族の方のこれまでのお付き合いが減ってしまいます。例えば、働き盛りで介護する立場になった場合、友達はみんな働いている年齢で、まだまだ病気にも関心が乏しいのが普通です。
介護をしている辛い思いや大変な経験を、これまでの友達と話題にできるのでしょうか。育児中のママ友のような、同じ立場の友人を新たに作ることができるのでしょうか。仕事と介護の往復で1日が終わってしまう中で、いつ、誰に、介護の悩みや愚痴を話せばいいのでしょうか。

私は常日頃から、孤独になっている家族さんへのこうした支援が欠落しているのではないかと思います。介護とは非常に孤独なものです。病院のセラピストや看護師は、当事者の病状説明やどういった障害なのかについては、業務と認識していて時間を割きますが、家族さんの気持ちをじっくり聞く事はあまりないものです。ケアマネジャーの友人がよく言っているのは「家族の話をきくことが仕事の大半だ」つまりケアマネジャーさんがケアプランを立てるために訪問した時ぐらいにしか、家族さんの気持ちを聞いてあげる場がほとんどないのではないかと思います

私たちが行える小さな支援から始めませんか

行政による保険制度や法整備を待つのではなく、

  • 病院や福祉で働く人は、家族の話を聞くことを通常業務の中に入れる
  • 一般の方々も、もし知り合いが介護に携わるようになったら、少し声をかけてみる
  • 家族会のように規約があり定期開催のものでなく、介護している家族がゆるく集まって、悩みや思いを分かち合える場を設ける
  • 病院や施設で、家族支援の集まりについて情報提供する

こうした小さなことが、家族にはとても大事で、時として救いのなるのではないでしょう。私たちが、障害をもった当事者だけでなく、介護する家族のことも同じくらいに大切に考えることで気がつくことはたくさんあり、できる支援はいくらでもあるのではないかと思います。自分が家族だったら?と想像してみて、小さくても自分でできることをやってみることが大きな支援につながっていくのだと思います。

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