記憶機能が障害されるとどうなる?
前回は記憶機能の三つの分類、「言葉にできるエピソード記憶」「身体で覚える手続き記憶」「作業の間だけ覚えておく作業記憶」について書きました。では、こうした記憶の機能が障害されるとどうなるのでしょうか?
- エピソード記憶で言えば、「過去の出来事が思い出せない」というものがあります。ドラマチックだから、よくテレビや映画になりますね。親しかった人が、誰か思い出せないみたいな。なじみの場所に行っても、どこかわからないとか。自分のこれまでの生活を思い出せない状態です。
これを専門用語では逆行性健忘といいます。発症や受傷してから遡っての健忘という意味です。
しかし、過去の事よりも新しいことが覚えられない、こちらの方が多くの人の悩みになります。こちらは今からの生活にずっと影響が続くわけなので、ものすごく乱暴なことを言えば、過去のことより、新しいできごとの記憶が定着しないことの方が困るわけです。これを前向性健忘と言います。
- 不思議なことに、手続き記憶との関連は少なくて、健忘は重度でも「身体で覚えたことはできる」とか「身体を使って覚えることはできる」人はたくさんいます。ヘビースモーカーであった人が、タバコを見ても何か言えなくても、どうやって使うか意識的にはわからなくても、手に持たせたら「吸う」とか。認知症の人も、箸を持たせたら使えるとかですね。
- 作業記憶の低下も、多く人が悩んでいます。正直、私はこれまで本を読んでも、今一つ作業記憶がわからなかったのです。しかし、就労している当事者のインタビューを重ねるうちに、徐々にわかってきました。例えば、誰かと話をしてる間に、今、何のテーマだったかな?Aをして、Bをして、Cをしようとするときに、Bをしてる途中で、次何するんだったかな?という状態になります。
記憶が障害されると、「この前こんなことあったよね」って言われたとき、何のこと?となります。何か約束あったんだけど、なんだったっけ?というふうになります。日々、不安になりますね。そのため、記憶障害に関しては、ご本人さんも気づきやすいです。どうしようっていうふうに思うわけです。不安や自信喪失という、記憶障害があるために、別の心理的な負担がかかっていく人が多いです。
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