ことばを話す能力~もっと知りたい失語症 その6~言語聴覚士のお仕事
前回までは、脳が「話す」までについて、お伝えしました。では、失語症になると「話す」はどのようになるのでしょうか。
たくさんある失語症の「話す」の症状
話すについては、失語症はたくさんの症状があります。
- どんな軽度になった人でも残ると言われる言葉が出にくい喚語困難があります。つまり頭の中で言いたいものはあるんだけど、それに言葉がついてこない、「あれ、あれ、なんだったっけ」というような症状です。ことばがすっとでてこないために、「えっ」「あの」など、フィラーが増えます。これはことばがすっとでてこない時間をうめているわけです。
- 言葉が出ずに回りくどい言い方になる場合もあります。「鉛筆」といいたいので「あの、ノートを書くときに使う、こういう(書く真似をする)・・」というもので、これは迂言といいます。
- 音を間違える場合、例えば「りんご」を「ガンゴ」といったような症状で、音韻性錯語といいます。または「りんご」が「みかん」のような、日本語に存在する違う言葉になる場合があり、これは語性錯語といいます。音韻性錯語の場合、明らかに間違いだとわかるので、聞き手も気がつくのですが、語性錯語の場合は日本語にある単語ですので、聞き手が勘違いしてしまうことがあり、トラブルの元になります。
- 日本語を話しているようになめらかに音を出しているのですが、すべての音が違っている新造語。「りんご」を「がりおんで」などです。音も違えば、構成する音の数も違うので、聞き手はほとんど予測ができません。新造語がもっと多用され、音さえ聞き取りにくくなるのをジャーゴンといいます。非常に発話量は多いのですが、聞き手は何を伝えたいのか、推定さえ難しくなります。
- その前に出てきた言葉を繰り返す場合もあり、保続といいます。これはことばだけでなく動作でも見られる人がいます
話したい、伝えたいのに、言葉が出てこない。失語症の方にとっても、聞き手にとっても、ストレスが高いですね。私は、言語聴覚士だからか、歩けない、手が動かない、これらと同等に、いや、それ以上、お辛いのではないかと感じています。私たち、言語聴覚士の落ち込む場面の上位には、「失語症の人の、言いたいことを組みとれなかった時」が入っています。
文章を話す場面でのこまりごと
私たちは単語(ことば)だけでなく、文章で話しますね。では、文章を話す場面での困りごととしては
- 助詞がわからない
- 言葉を次々に思い出せない
- 文章全体を把握して話すことができない
といったことがあります。
例えば脱文法と言うのですが、助詞が脱落する。つまり「りんご、スーパー、行く、行って、買います」のように、「りんごをスーパーへ行って買う」という文章の助詞が抜ける場合があります。または、助詞を間違える場合があります。「りんごがスーパーを買う」のようなに、間違えている場合があります。明らかに間違いと分かる場合は、聞き手も推測できるのですが、「お父さんがお母さんに言った」でも「お父さんにおかあさんが言った」でも、両方成り立つ場合は、誤解を生じます。
言葉を次々に思い出せないため、文章が非常に途切れ途切れになってしまったり、言葉を思い出すのに、一生懸命になりすぎて、途中で自分が何の話をしているか、トピックがわからなくなる、または話している途中で主語と述語がずれてしまい、相手に伝わりにくくなる場合があります。
なので、ものの名前を言う練習だけでは、話す練習にはならないのです。
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