事前の準備は念入りに〜失語症と高次脳機能障害の方へのオンライン言語リハビリ〜
オンラインで言語リハビリを行っている言語聴覚士の西村紀子です。失語症や高次脳機能障害の人からよく聞く
「とっさに言われたことに対して、言葉がでない」というお悩み。つまり、普段の会話ではそんなに困らないけど、ここぞという時に限って言葉がでない。
例えば、こちらオンライン言語リハビリ、ご利用者さんのTwitterのつぶやきから転記します↓↓
今から障害者職場センターで初訓練。ドキドキする
自分の得意なこと苦手なことを上げましょうて言われたけど、元々苦手。
苦手のことばっかし浮かぶ。。で、脳静止
障害者職業センターでこないだ全く出来なかったやつ、今やったら一応できた。
得意なもの、不得意なもののやつ。今はパソコンでやったから出来たんかな?それと1日の疲れかなぁ。とりあえず良かった。
パソコンに頼りすぎてるの、解消せんとなぁ
なぜできなかったのか、わかりますか?
もともとパソコンの作業をするつもりでセンターに行ったものの、想定外の面談。驚いて、あせったために、認知資源が枯渇してしまったという典型例です。
不安と焦りの影響を知ろう
認知資源とは、鈴木大介氏が「脳コワさん支援ガイド」で書いてありますが、脳のリソースみたいなものです。この認知資源は、脳を損傷すると、不安や焦りがある場面で一気に枯渇してしまい、そして回復するまでに時間がかかる。
そして、そのあと、自宅で落ち着いて、自分のペースで取り組んでみたらできたというオチ。パソコンだからではなく、自分のペースで自分の落ち着く場所だったからです。
この例から考えることは
1 事前の準備がないと、通常できることもできなくなる。
口頭でのやりとりは、瞬時の反応を求められますよね。相手のスピードにあわせることが要求されるので、焦りやすいです。
2 即座の反応が難しいだけでなく、焦ることでより言葉もでなくなるし、認知資源を枯渇してしまう。
あせれば、あせるほど、悪循環です。
3 脳を損傷すると、認知資源が枯渇しやすく、充填するにも時間がかかるので、失敗体験をすぐにリカバーしにくい。
次の日ならできたというのは、認知資源が充填され、脳疲労も回復した状態だったから
4 文字ベースは自分のペースでできるので、口頭よりも簡単な場合がある。
これは、多くの当事者の方がおっしゃいます。書き言葉は、話し言葉より高度ですが、自分のペースでできる強みがあります。
5「できなかった」という失敗体験としないようにアドバイス・支援が必要
自分はこんなことも言えないのかと、自己肯定感を下げないように声かけをしたいですね。焦るとよくない、落ち着けばできると。
事前の準備を念入りに
そのためには、事前の準備の必要性を伝えましょう。準備したらできるのだから、読み原稿と想定問答を作っておく。私はその準備をもとに、オンライン言語リハビリの時間に、実際のシーンを想定して行っています。予行練習ですね。これは病院に勤めていた時から、有効だなと思って、退院する人、みなさんに実施していました。
「素の自分を見てもらったらいい」と言われるかもしれませんが、準備をしちなかったら、素ではなくいつもより低いパフォーマンスになる可能性が大です。それでも「慌てると、言葉が出にくくなる」ことを知ってもらう機会に活かすという目的であればOKです。体験しないと実感できないこともありますから。その場合は、意味もなく「できなかった」と落ち込むことは避けるよう、なぜできなかったか、次はどうしたらよいのか伝えると良いと思います。ここのフォローは必須です。
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