読んでもわからない長い文章〜失語症と高次脳機能障害の方への言語リハビリ〜

読んでもわからない長い文章〜失語症と高次脳機能障害の方への言語リハビリ〜

オンラインで言語リハビリを行っている言語聴覚士の西村紀子です。失語症や高次脳機能障害の人からの相談にお答えしています。今日は、

「何が書いてあるのか、頭に入って来ない」というお悩み。つまり、一つ一つの単語や短い文章はわかるのだけど、読み進めていくと、結局、何が書いてあるのかわからないという相談です。以前、文章理解の困難さの背景にあるワーキングメモリの低下について書きました.端的に言えば、文章が長いと把握が難しいのです。長い文章を理解するときは、いくつか切り分けて、全部を頭の中に保持→全体を把握という流れになります。切り分ける段階で、ひとつひとつ瞬時に理解しないといけません。難しいテキストや本を読むとき、ラインを引いて読み込んだりしませんか?ライン引きながら、一つ一つに注意を向け、理解を促しているわけです。そうやって理解した一つ一つの塊を、頭の中に置いて(記憶のとどめておいて)、全体を把握するわけです。なので、記憶の箱が小さくなると、全体を把握するのが難しくなります。

複雑な構造の文章は分解しよう

「先生、テキストの意味がわからないんです。覚えられません」

さて、高次脳機能障害のAさんからこんなご相談。テキストを読んでもらったところ、

これ、テキストが悪いやん!って思いました。

ざくっとこんな文章です。

サラダは、野菜料理の一つで、ビタミンなどの栄養をとるために、レタスやきゅうりやトマトなどを、多くは生の状態で食べる料理の一つです。

 

何がいいたいのだ?と突っ込みたくなる。ちなみに、Aさんはサラダを知っているし、料理もできます。でも、このテキストの意味が把握できない。「頭がぱんぱんです・・入ってこないんです」とのこと。そりゃそうだ。

だってこの文章には

  • サラダという言葉の概念(なに)
  • サラダを食べる目的(なぜ)
  • 材料や作り方(どうやって)

全部が入っているのですから。その要素を瞬時に理解できないと、文章把握できません。サラダくらいならわかるかもしれませんが、いろんな要素を並列に並べすぎですね。

この文章をマネして、言語療法の説明に置き換えてみました。読んでもわからない言語聴覚士もいるかも!(笑)

失語症の方にむけての言語療法とは、主に脳卒中や頭部外傷に対するリハビリテーションの一つで、損傷された言語機能の回復をめざして、言語聴覚士が、絵カードやドリル、その他その人の言語機能にあわせたリハビリプログラムを立てて、基本的にはマンツーマンで行うものです。

 

でしょうか。この文章を読んだ一般の人の感想は、たぶん「あんた、何する人?」ですね。いったい何をするのかが全然わからない。

とはいえ、世の中に、こういう文章が氾濫(それもテキストとか編集や監修者がいても!)ですから、読みやすくするアドバイスが必要です。

オンライン言語リハビリの例をお伝えします

「この文章にはたくさんのことが書かれているからわかりにくいね。句点(、)を目安に区切って、箇条書きにしてみて。」とお伝えしました。

例えば、初めのところ、「サラダは野菜料理の一つです」これで一つ。「ビタミンなどの栄養を取るために食べます」これで1つ。

こんな感じで、箇条書きになおす練習をします。そうして1つ1つに分解していくと、

サラダは何か、食べる目的は何か、材料は何で、どのように調理するのかを説明しているのだとわかります。ポイントがわかりますね。

そして、リハビリでは、一人でもできるような方法をお伝えするのがポイント!だってすべてのテキストをリハビリの時間に読み解くわけには行かないので。

文章はなるべく短く伝える

失語症・高次脳機能障害がある人には、なるべく文章は短くして伝えましょう。まして口頭で話すときはなおさらです。

接続詞をやたらと使って繋がないことを意識するだけでも違ってきます。

相手に伝わりにくい、読みにくい文章についてはこちら↓↓

NPO法人Reジョブ大阪の理事である松嶋とこちらのYouTubeでも語っています。

ちなみに、相手の松嶋に、私は5年前、文章の添削を受けていました。生徒だったのです。で、私が提出する文章課題に書かれている医療の実態を知って、彼女は、NPO法人の理事になったのです。人生は不思議。

 

 

私の活動をご紹介

 

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