失語症の適切な評価と訓練 – 専門性が問われる現場の課題

失語症の適切な評価と訓練 – 専門性が問われる現場の課題

こんにちは。言語聴覚士の多田紀子です。

引き続き、非流暢性と流暢性について、今回は、言語聴覚士の方向けに書きます。

失語症の2つのタイプを理解する

失語症には非流暢と流暢の2つのタイプがあります。どちらも換語困難があるため、特に重度になると言葉が出ません。この基本的な理解が、適切な訓練を行う上で非常に重要です。

流暢性失語で有名なウェルニッケ失語は「宇宙語」と言われるように、ペラペラと日本語にない言葉を話すことが多いとされています。しかし、実際はそういう人ばかりではありません。言葉が出ないことに気づいて話さなくなっている流暢性失語の人がたくさんいるのです。

間違った訓練が行われている現実

ところが、そんな流暢性失語の方に対して「あいうえお」などの構音訓練をしている言語聴覚士がいます。流暢なのですから全く無意味です。根本的に訓練の方向性が間違っています。

流暢性失語の方に構音訓練は全く無意味で、100歩譲って非流暢性であればまだしも…という感じです。でも、まずは換語困難へのアプローチが必要です。だってそのために音が出せないのですから。

適切な評価と理解なしに訓練を行うことは、患者さんにとって時間の無駄どころか逆効果になることもあります。失語症の評価を理解した支援が必要なのです。

評価の難しさと専門性の核心

私も経験がありますが、ほとんどしゃべらなくなった流暢性失語の人を評価するのは困難です。だって話してくれないのですから。

しかし、復唱や音読の際に出てくる言葉が非常になめらかで流暢であれば、その方は非流暢ではなく流暢性失語です。すごくざっくりした言い方ですが、このような観察が重要になります。

話さなくなった患者さんでも、わずかな手がかりから正しい評価をすることが重要です。間違った訓練は時間の無駄になってしまいます。というか、ここが言語聴覚士の専門性の核心部分なのです。

聴覚的理解の評価という難しさ

追加として、見分ける時には聴覚的理解の評価も重要なポイントになりますが、それはそれでまた難しい側面もあります。理解していないのに状況判断で対応している方も多いため、真の理解力を測ることは簡単ではありません。

これらは、SLTA等の標準的な検査ができない場合についての考察です。現場では様々な制約がある中で、いかに適切な評価と訓練を行うかが問われています。

専門性に基づいた支援の重要性

失語症の人は実はたくさんいます。しかし、適切な評価を受けられずに、不適切な訓練を受けている方も少なくありません。

言語聴覚士には、失語症のタイプを正確に見極め、それぞれに応じた適切な訓練プログラムを提供する専門性が求められます。構音訓練が必要な人には構音訓練を、換語困難に対するアプローチが必要な人にはそれに特化した訓練を。

この見極めこそが、言語聴覚士の専門性の真価が問われる部分なのです。患者さん一人ひとりに最適な支援を提供するために、私たちは常に評価の精度を高め、専門知識を深めていく必要があります。

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