障害を隠すか?説明するのか?見えない障害といわれる高次脳機能障害について
私は、「言語聴覚士が行う社会復帰支援」というセミナーを開催していますが、最終のコマで「職場への説明」と言う時間を設けています。評価、訓練、周囲への理解、この3つがそろってこその復帰支援と考えるからです。
高次脳機能障害は見えない障害と言われています。見えないので、とりあえず隠すことも可能です。就職活動の際に悩むのは、この障害を隠すのか説明するのか?です。
これまで多くの症例を経験し、勉強会などに参加して学んできました。今の私の考えをお伝えします。
もとの会社に戻る場合
今まで勤めていた会社に戻るのであれば、基本的には職場は、仕事やお互いのことがわかっている人が戻ってくる方が、新しい人を採用するよりも楽です。だから、あなたが一体何ができて、何ができないのか、できないことをどう対応したらいいのか?が知りたい。
なので、これらの点をはっきり伝え、会社に戻ることをおすすめします。
軽度であれば、または仕事の内容によっては、病前の仕事がそのままできる場合もある。そういう場合は、なおさら今まで通りの仕事をしてもらえると、周囲の人は思っていることが多い。脳が疲労しやすかったり、なんらかの違いはあるので、そうした少しのことでも隠さずにきっちり説明をした方が、誤解を招くよりも何倍もいいと思います。
確かに職場環境によっては、「それでは困る」ということもあるでしょう。その時は、配置転換、業務調整など申し出ることになります。理解してもらえなかったら診断書を提出するなど、理解をしてもらう努力を、高次脳機能障害者であるあなただけでなく、関わる医療関係者も一緒にするべきだと思います。遠慮なく協力を申し出てください。協力が得られない時は、理解してくれる医療者を探しましょう。
求職活動をする場合
一から求職活動スタートする時、障害を隠すのかどうか、これは非常に悩ましいところです。しかし、雇用側からすると、よくわからない障害で「どうしていいのか、対応方法、配慮の仕方がわからない」のが1番困るところだから、あなたが今、自分は何ができて、何ができないのか、できないことについてどういう工夫をすればできるのか、そうしたことを具体的に話すことが、誤解を生じさせないために必要です。
新しい職場は以前のあなたを知りません。作業が遅い、忘れ物が多い、ミスが多い人と思われてしまいます。努力してもなかなか改善しない、障害による困難さを理解してもらえず、指導や叱責が続くとお互いが疲弊します。あなたの自尊心が損なわれ、退職、心の病気になってしまうのも少なくありません。
新しい職場で新しく人間関係を構築する時に、あなたの障害による困難さを隠したままでは、努力をして工夫をしても、「こういう人なのか」「改善する気がない」との評価になってしまいます。それよりも「障害によってこういうことが苦手です」でも「こういう工夫をしたらできるので、よろしくお願いします」と伝え、できる関係を築いていく方が大切です。
確かに面接で高次脳機能障害のことを伝えると、不採用なるのではないかと不安ですよね。でも障害について全く理解を示さない職場に行っても、就労継続がなかなか厳しいものがあります。
そして、面接の前には、できることできないことをきちんと書き出して、筋道たてて説明ができるように練習を積み重ねておくことをお勧めします。
今の日本は非常に人手不足です。高次脳機能障害によって凸凹があるかもしれませんが、どの職場も障害者だからではなくて、「どう対応したら良いのか、何に配慮したらいいのか」そうした事が分からないので敬遠されるのだと思います。分かりやすくあなたの特性をお伝えしてみてください。
終わりに
こちら私が関わってるNPO法人「Reジョブ大阪」です。就労について何かご相談があれば連絡ください。当事者だけではなく、高次脳機能障害者が職場にいて、どう対応して良いのかわからないなど、雇用者さまからの相談もどうぞ。
言語聴覚士の方むけに、1月6日、大阪で「言語聴覚士が行う社会復帰支援」のセミナーを開催します。詳細をご覧ください。
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