【事例から学ぶ】意思表出の重要性
今回は意思表出の重要性について、事例を紹介しながら言語聴覚士の視点からお伝えしていきます。
(3)生活の事例「自分で何も決められない」: 意思表出の機会を奪われたまま成長
今回は30代の女性の事例です。父が会社員、母親がパート勤務の家庭で育ち、小学高学年で事故にあいました。
高次脳機能障害の診断はつかず、退院したものの学業には苦しみました。
何かを選択するまでに時間がかかり、そのため日々のスケジュールや服装など全て母親が決定するなど、受動的な生活を送りました。
失語症ではないものの、自分の気持ちを伝えるまでに時間がかかり、その結果、自身の意見や気持ちを表出する機会を失ったまま20年以上が経過しました。
20代後半で「高次脳機能障害」と診断されましたが、これまでの母親との関係をを変えることは難しく、「お母さんに聞かないとわからない」という状態が続きます。
現在は、就労支援機関に通っています。初めての頃は他人に話しかけることがなく、話しかけられても言葉につまり、時折感情が抑えられずに泣いてしまうことが多くありました。
しかし、カウンセリングを受ける中で、自分の気持ちや意見をゆっくりと話せる機会が増えるにつれ、少しずつ特定の人に対して話すことができるようになりました。
学童期や幼少期に高次脳機能障害になった場合、周りの大人が代わりに意思決定をすることが多いです。
これにより、本人は自分の意志を表現する機会を奪われたまま成長してしまいます。
このような場合、自分の言葉で自分の思いを伝えてもいいと伝え、小さなことから自分で決める経験を積むことが重要です。
同時に、周りの大人には自己決定権について知ってもらい、関わりを少しずつ変えていくためのサポートも必要です。
この事例では、事故にあったのは見守っていなかった自分の過失であるという親の罪悪感と、娘の世話を一人で引き受けることが母親の役割であるという母親の価値観あるため、変わるためには多くの時間を要すると考えられます。
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子供が自立するまでは子育て記事も書いていましたが
この数年は言語聴覚士に関係することだけを書いています。
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