【事例から学ぶ】高次脳機能障害の長期回復と妻の役割

【事例から学ぶ】高次脳機能障害の長期回復と妻の役割

今回は高次脳機能障害の長期回復と妻の役割について、言語聴覚士の視点からお伝えしていきます。

急性期、回復期、生活期それぞれの事例を通じて考察してみましょう。​

(2)回復期事例「あのときは、すぐに仕事ができると思っていた」
長期回復と妻の役割

今回の事例は40代の男性です。妻と子ども二人、が大手スーパーの管理職として働いていました。
ある日、帰宅途中にくも膜下出血を発症し、救急搬送されました。身体麻痺こそなかったものの、感覚性失語症高次脳機能障害となりました。
急性期病院では暴れることが多くリハビリ困難。本人に説明がないままリハビリ病院に転院。
「なんで?なんで?」と混乱が続き、離院の可能性が高いため、妻や母親が見守りに来ていました。

病識が向上するにつれ、失語症の理解が進みましたが、「言葉が不自由でも仕事はできる」と早期復職の希望を訴えます。
妻同席でカンファレンスを開催し、「1年半の休業期間を最大限に活用し、外来での言語療法を継続するとともに、配置転換を職場に提案する。また復職後は障害者職業センター、就業・生活支援センターと連携し、就労継続にむけて取り組む」ことを目標としました。
妻から職場に連絡し、入院中に3回、本人、妻、上司、リハビリ担当者が面談し、復帰計画がスタートしました。

発症から1年4ヶ月で、配置転換と週3日の勤務で復帰。職場に対し、病状と改善には長期にわたると説明し、理解を求めました。
月2回の言語療法を継続しました。しかし、3年経過後、妻から「職場でうまくいっていないようだ。やめたいと言っている」と連絡がありました。

病状理解が乏しい本人と、どうすればいいかわからない職場に対して、具体的に「何ができるか、何ができないか」「どんな点が配慮されると嬉しいか」を伝えました。
同時に、「回復には時間がかかりますが、半年後や1年後にはこんな状態になる予定です」という見通しも伝えました。
さらに、妻は粘り強く夫に寄り添い、失語症の夫の気持ちを理解してリハビリ担当者に伝えました。復職後も、職場には頻繁に連絡し、問題点を把握しようと努めました。

特に「仕事を辞めたい」と口にする裏には、「がんばっても上手くいかない。どうすればいいのか」という本音があります。
この真の気持ちを代弁し、関係者に伝えることなど、妻が代理人として果たす役割は非常に重要です。
失語症者は、日常の簡単な会話はできても、複雑な内容を表現するのが難しいため、代理として家族がサポートし、一緒に話し合うことが非常に大切です。

私の活動をご紹介

 

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください