「聞く」が困難になると?失語症のリハビリとは?〜言語聴覚士のお仕事〜
医療と健康、そしてリハビリの情報〜言語聴覚士というお仕事〜本日もよろしくお願いします。
前回に引き続き、失語症、「聞く」についてです。失語症は「聞く・話す・読む・書く」のすべてが困難になります。しかし、困難さはそれぞれ違います。多いのは「聞く」より「読む」の方が良好な場合です。なので、文字がわかればなんとかなる!と思われがちですが、いえいえ、私たちの日常生活、ほとんどが「音声言語」でやりとりしています。
「聞く」が難しくなると
入院している期間は、看護師さんや医師が言っていることがよく理解できません。それでなくても病気をかかえて不安なのに、「自分の病気がなにか?どんなことが身に起こったのか?今後どうなるのか?」といった、日常会話よりも複雑なこと、それも初めて知るようなことを説明されても理解することが難しいです。
もちろん不安になりますよね。
そして、「これをしないで下さい」「こうして下さい」と、言葉で説明されてもこれもわかりません。そして、「しないでください」と言われたことを「わからずに」してしまうことがたくさんあります。結果、「あれだけ言ったのに!」と怒られている場面をよく見ます。
もちろん、自尊心は傷つき、前向きに良くなろうなんて思えなくなります。
自宅に帰っても同じようなことが起こります。
さらに、複数の人との会話を考えてみてください。テンポは速いし、話題は展開されていくし、同時にしゃべっている人もいるし、軽度の失語症の方でもついていくのがとても難しいです。
家族との団欒、友人との会食、そんなことがとても難しくなっていくのです。もちろん、孤立感を感じることが多くなります。
聞いて理解するって、日頃意識していませんが、こんなに重要なことなのです。
言語聴覚士のお仕事として重要視していること
ある先生から指導をうけて以来、私は「聞く」ことがいかに重要なのか、つねに心に留めて仕事しています。何をおいても、言語訓練では「聞く」の評価と訓練を最重要項目と位置つけています。
そして、訓練で急に改善するわけではないので、周囲の人には以下のことを説明します。
- この方は「どの程度のことがわかるのか」と、「どうしたらわかるのか」ということを説明します。もちろん文字を提示したらいい場合は「何か書いて渡してほしい」とお伝えしますが、あまり使ってもらえません。コミュニケーションの習慣を変えることは難しいものです。なので、「必ず名前を呼んでこちらに注意を向けてもらう」「短く端的に伝える」「ジェスチャーをいれる」など、話しかけの工夫をお伝えします。
- どう話しかけたらいいのか、そして、わかっているのか曖昧にしかわからないのか、必ず顔をみて確認してほしいということです。ほとんどの場合、双方とも、失語症の人が「わかってないことがわかってない」し、失語症の人は「わかった」という反応をする傾向があるからです。
次回は、言語訓練について書きます。
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