失語症の言語訓練の目的は?〜言語聴覚士のお仕事〜
医療と健康、そしてリハビリの情報〜言語聴覚士というお仕事〜本日もよろしくお願いします。
言語室での訓練だけではない、私たちのお仕事
前回に引き続き、ベテランの先生の指導をまとめたいと思います。
失語症の方の訓練は、基本的には言語室で、言語聴覚士と1対1で行います。ここでは、カードやプリントを使用して、「言語機能」の回復のための訓練を実施します。
ちょっと特殊な環境です。
いくら、訓練で正答率があがっても、日常場面で能力が発揮できなければ、訓練の効果があったとは言えないのです。あくまでも、日々の生活の中で、周囲の人とコミュニケーションがとれるかどうかが、訓練効果ですから。
そして、訓練効果を待つことなく、日々、近しい人とのコミュニケーション活動は行われています。
なので、私たち、言語聴覚士がすべきことは、症状の分析だけでなく
「どのような機能が残っているか?」と「どうしたらコミュニケーションが図れるか?」を考えて、何かしらの手段を計画し、周囲の人にもお伝えすることです。
何ができないか?できない事をリハビリする
これだけでは、不十分です。
何ができるのか?できる事を伸ばすには?
この視点がとても大事ということに、改めて気が付きました。
残念ながら、重度の失語症を呈した人ほど、言語機能は回復しにくいです。でも、コミュニケーション能力が改善しないわけではありません。
成功体験を増やし、意欲を高める関わりをして行くことも、大切な言語聴覚士のお仕事なのです。
意思が通じると、涙を浮かべた重度失語症の男性
相手の話す言葉は理解できている、でも、自分の考えを伝えることが重度に障害されている男性。発症して数ヶ月も経っています。先日、初めてお会いしました。これまで、絵カードをつかって「パン」や「トイレ」を言う練習ばかりしていたようです。そして、とにかく、言葉が思いつかないのに、何か言おうと一生懸命に口を動かしています。そして、相手の言葉に気を向けていません。
でも、「はい」「いいえ」だけ表出できたら、彼が言いたいことはある程度、伝わるのではないか?と思いました。そこで「◯」「×」を書いた紙を渡して「私が言っていることをよく聞いてください。あなたが言いたいことと合っていたら◯、違っていたら×を指差ししてくださいね」と練習を始めてみました。始めは戸惑っていましたが、すぐに何をするか理解されました。
カラオケが好きだったとカルテに書いてあったので、好きな歌手を少しずつ絞って行きました。「女性?」「男性?」から始まり「歌謡曲?」「演歌?」と進め、ついに好きな演歌歌手と歌がわかりました!その瞬間、涙を浮かべていました。
私はすぐにスマホを持ってきて(便利になりました!)、YouTubeで検索です。この方は本当に重度の障害を呈していたので、メロディーを口ずさむしかできませんでしたが、とても嬉しそうでした。そして、20分という短い時間で、このようなコミュニケーションが成立できて、私もとても嬉しかったです♪だから、このお仕事が好きなんです。
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