障害者手帳の申請に至るまでの問題点〜言語聴覚士のお仕事〜
障害者手帳とは、障害がある人が市町村に申請して受け取れる手帳のことです。「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」があり、障害の程度によって、様々な行政サービス、税の優遇などを受けられます。手帳についての詳細はこちらをご覧ください。
日本ではこのような障害者手帳の制度が作られてはいますが、大事なのは必要な人が手帳を申請して、制度を利用できているかということです。医療の現場にいると、手帳を申請するまでに、すでに問題が生じていることがわかります。
手帳申請に対する当事者の思い
手帳の存在を知った方々が、すぐに申請するとは限りません。
申請するためには、まず医師による診断を受けなければなりません。高次脳機能障害や、発達障害は、「見えない障害」であるだけに、「自分は障害者なのか?」「我が子は障害者なのか?」と悩まれる方が多いのではないでしょうか。また明確に「障害」として診断されることに、抵抗感を抱く人が多いようです。
そして、決してあってはならないのですが、未だに「差別」が残っているのも現実です。申請しても職場や学校に情報が流れるわけではありませんが、万が一知られたらどうしようと、不安に思われる方も非常に多く、臨床では「絶対に秘密にしてくれ」「隠して職場に戻ります」などの言葉を、耳にします。
そして、手帳を取得した結果、どんなメリットがあるのかが明確でない限り、わざわざ申請する必要があるのかと、疑問に思われる方も多いです。あなたが医療や福祉の現場に携わっているのであれば、手帳を申請したらどのようなサービスがあるのか、メリットはなにかを丁寧に説明してあげて下さい。
手帳申請にもサポートが必要
手帳を申請するためには、
- 役所にいって書類を受け取る、
- 医療機関を受診して、医師に障害者手帳用診断書を作成してもらう
- 必要書類を揃えて役所に申請する
という行動が必要です。
高次脳機能障害者は、
- 一人で必要な情報を収集して行動する
- 見知らぬ場所へ行って必要なことを相談する
- 複数の必要な書類を整える
などの行動自体が難しく、申請に際してサポートしてくれる人が必要です。
ちなみに、高次脳機能障害者が利用できる「精神障害者保健福祉手帳」は、発症して6ヶ月経過してからの申請となっています。現在の医療保健制度では、脳損傷によって障害を呈した人は、入院期間が長くても、急性期病院、回復期病院あわせて6〜7ヶ月で、その後、外来継続をしている病院は少ないです。となると、ほとんどの高次脳機能障害者は、手帳を申請するころは、病院を退院し自宅で生活をしており、医療機関からのサポートが受けにくい状況です。また、全ての病院が診断書を書いてくれるわけではありませんので、かかりつけ医が自宅そばの診療所などの場合、診断書を書いてくれる病院をわざわざ探して、そこに行かなければなりません。
もしあなたの近くに高次脳機能障害と思われる人がいる場合、手帳について知らなければ制度について説明してあげてください。そして、手帳を必要としているのに本人が申請できないのであれば、市役所の福祉担当窓口に相談してみて下さい。
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