継ぎ目のない連携に必要な、たったひとつのこと〜言語聴覚士のお仕事〜

継ぎ目のない連携に必要な、たったひとつのこと〜言語聴覚士のお仕事〜

私は現在、脳外科病院に勤務しています。 脳卒中、頭部外傷などで急性期病院に入院した患者さんの多くは、急性期病院で治療をし、その後リハビリが必要であればリハビリ病院を経て、自宅に戻ります。退院して自宅に戻ることが困難であれば、施設に入所します。病院では医師が毎日診察し、看護師がケアします。さらにリハビリ職員や、医療職と言われる多くのスタッフが患者さんに関わります。しかし、自宅ではおもに家族とケアマネージャが、施設では介護士が関わることになります。このように病院、在宅、施設と生活する場が変わることで、ひとりの患者さんに関わるスタッフの職種が変わることになります。

継ぎ目は「職務不可侵」で生じる

職務不可侵という言葉をご存知ですか?それぞれの職種の専門性を尊重して、その職務については口出しをしない方がよいという考えです。

例えば、リハビリひとつ取っても、歩行に関することは理学療法士が、更衣や排泄動作に関することは作業療法士が、話す・聞くなどコミュニケーションについては言語聴覚士が、それぞれ評価と訓練を担当します。同様に、全身管理は看護師が、薬については薬剤師が、食事内容や栄養状態については管理栄養士が担当します。現代の医療においては、それぞれの職種が専門的に関わる方が、患者さんの利益になるとされています。

しかし、同じ病院内であっても、例えば、お薬による影響に気がつくのは薬剤師だけとは限りません。また、リハビリ時間以外で、歩行や身の回りのこと、他者とのコミュニケーションなどがどの程度できているかなどについては、病棟の看護師や介護士の方が認識している等、専門分野ではない他職種の人間が評価できていることも少なくありません。

そして、病院職員から、自宅や施設で関わる職員に対して、患者さんの病状やリハビリの経過に関する情報が十分に提供されない場合、もしくは、自宅や施設の環境を聞かずに病院内でしかできない訓練をしている場合などでは、注意が必要です。患者さんは、退院日を境に、これまで介助の手を借りながらでも少しずつできるようになっていた活動が途絶えてしまい、結果、せっかく改善していた機能が低下することもあるのです。

患者さんに関わる私たちが、自分の専門分野内だけで仕事をしていると、患者さんに不利益をもたらすことは少なくありません。

一歩踏み込む「少しのおせっかい」こそ、継ぎ目のない連携に必要

門掃きという言葉をご存知ですか?自分の家の前だけでなく、お隣の敷地も少しだけ掃くことです。

入院中、病院職員は、他職種の分野でも気にかけ、必要に応じて少し関わる。退院に際しては、病院職員は、退院後の生活環境を見据えて自宅や施設で関わる人に情報を提供する。退院後に困ったことや疑問点があれば、自宅や施設から、病院に問い合わせる。そのような、自分の専門分野から一歩だけ、お互いが出て「少しのおせっかい」を行えば、継ぎ目がない連携ができるのではないかと考えます。

この記事は、在宅診療をされている、東クリニックの東英子先生のお話から学んだことをもとに書きました。

 

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