転院した翌日から、厳しいリハビリが始まった〜高次脳機能障害者の声なき声〜
「絶対に僕に文句を言わないでください」という理学療法士の先生とのリハビリは翌日から始まりました。
前回の記事はこちら 重症のままリハビリ病院に転院となった
まず、僕の場合は、姿勢が悪いので、姿勢から直した。最初、青い棒を背中の真ん中に敷いて、しばらく寝ころんでいた。背中が痛くて大変だった。次にアキレス腱が硬いので、階段みたいなもので練習した。毎日繰り返していると、徐々に柔らかくなってきた。とにかくリハビリが厳しいので「絶対に負けてたまるか」と意地になってきた。気がつくと、リハビリ室でみんなが僕を見ていた。最大の難関は、僕の膝が思うように曲がらなかったことだ。先生に聞くと、僕は脳出血が重いので、なかなか曲がらないと言った。でもやるしかないと思った。必ず歩いてみせると心に誓った。もっともきつい左足1本で20分くらいスクワットをし続けた。あの時はさすがに限界にきていた。
脳の内側部になる視床という部位は、細い血管がたくさん通っており、高血圧による脳出血の好発部位です。そして出血量がどの程度であったか、どの部位まで広がったかによって、予後(どこまで回復するか?)が大まかにわかります。
公開されている文献が少ないのですが、こちらご参照ください。
この患者さんは、出血量が多かったため、上肢と下肢(手足)に重度の麻痺が残りました。ここに書かれている姿勢が悪いは、左半身が麻痺になったため、左右で筋肉のバランスが崩れており、普通にベットに寝ていても背筋が左にくの字に曲がってしまっている状態です。なので、まずは硬いポールにのって、体幹の姿勢を調整することから始まっています。こうした患者さんは、寝ていても体の緊張が取れていないので「寝ているようで眠れていない、休めていない」状態で、寝ても疲れが取りにくいのです。
さらに、アキレス腱が硬いとは、つねにつま先がのびるような力が入ってしまい、足首が直角に曲がらない状態です。足底が地面につかず、常につま先立ちのような形になっています。このため、体重などを利用して足首が曲がるように、筋肉を伸ばすことをしているのです。膝も当然伸びきっていて曲がりません。私たちは、歩く時に左右の足を交互に出しますが、前に出す時は膝を少し曲げていますね。彼は足の筋肉が伸びきった形で固まっているので、膝が曲がらず、棒のように体についているのです。これでは歩けません。
このレベルから、彼は「歩けるようにしてみせます」というセラピストの言葉を信じて、いや、信じるしか道がなかったので、ひたすら厳しいリハビリに耐えて頑張るのです。
急性期に受けていたリハビリについてこのように書いています。
厳しい言葉ですが、前の病院の先生は少し優しすぎると思います。やさしさは、患者が自分にとっていい成果がでないので、よくないと思います。
患者さんによって、厳しいと逆効果になる場合もあるし、前頭葉という大脳皮質を損傷した高次脳機能障害者の中には、わかっているけど意欲がどうしてもわかないという人もいます。鬱傾向を呈する人もいます。しかし、これも脳損傷の部位から、おおまかに予測できます。彼の場合は、損傷部位が大脳皮質ではなかったこと、もともとかなりの努力家であったこと、そして、何よりも記憶が保たれていたことも影響があったのではないかと思います。今の自分がどんな状態で、日々のリハビリで何をして、数日前と比べるとどう改善してきているのか、こうしたことが記憶に残っていることも意欲に影響を及ぼすのではないかと考えます。
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