高次脳機能の中で基盤となる「注意機能」について

高次脳機能の中で基盤となる「注意機能」について

今日からは、行政定義における高次脳機能障害には、どんな症状があるのかお伝えしたいと思います。

まず高次脳機能といわれるものの中でも、階層性があります。ピラミッドみたいになっているのですね。その一番基盤となるのが、その注意機能と言われているものです。

高次脳機能の基盤となる注意機能について

その注意は、「持続」「分配」「転換」「選択」の四つあると言われていますが、この中に「情報処理」というのを入れる方もおられますが、私は別と捉える派です。では、それぞれ、どのような機能があるのでしょうか?

持続・・私達は何かに注意を向け続け、集中することができます。

例えば5分で終わる作業だったら、5分間ずっと集中する。すごく複雑で難しい作業だったら、1時間とか2時間とか、必要なだけ注意を持続することができます。これが「注意の持続」です。

分配・・複数のことに注意を向けることです。こっちもちょっと気になるけど、こっちも気になるっていうふうに、複数のことに注意を向けることもできますね。TVを見ながらご飯をたべるとか朝飯前にやっていますね。車を運転するときなんて、前を見て、後ろや横も気にして、さらに同乗者と話すとか、結構難易度が高いことでさえ、慣れてしまえば難なくできています。これが注意の分配です。

転換・・適度に注意を切り替えることです。何かやってたんだけど、今度はこっちに取りかかかって、またさっきの作業にというように、注意を切り替えることもできます。PCで資料を作成していて、ふいに隣の人が話しかけてきたとしても、すぐさま隣の人に注意を向けて、話が終わったらまあPC作業に取り掛かる、こんな当たり前の光景は、注意の転換によるものです。

選択・・複数の情報から、必要な情報だけを取り出すことです。駅の中、雑踏の中でも、自分が必要な情報だけは聞き取ることができますね。全部同じ音で、頭の中に入ってくることはないです。例えばヨドバシカメラみたいなところを想像してみてください。音もすごいですが、POPというかそういうものが、賑々しく展示されていますね。その中から、自分が欲しい商品とか必要なものだけを、見つけることが行きますよね、これが注意の選択です。ま、その選択の前に、選別がありますが。

 

注意機能が障害されるとどうなるか?

注意機能は高次脳機能の基盤であるがゆえ、脳を損傷したらほとんどの方に影響がでます。

持続・・ある作業をするために必要な時間、ずっと集中することが難しくなります。本を読んでる先から集中力が途切れてしまって、内容が少しも頭に入って来ないとか。

分配・・一つのことしか見えてないとか、同時に何かができない、例えばご飯を食べてるけど、テレビに気を取られたらもう手が止まっちゃうとか。人の話を聞いているときに、別のことに気を取られてしまうと、全く聞いていないとか。反対に、ちょっとのことで気が散ってしまうということもあります。つまり必要に応じて、注意をふりわけることが難しくなるのですね。

転換・・必要に応じて注意を切り替えられない場合ですと、何かに取り掛かったらそればかりで「注意がはがせない」と表現さえる状態になります。他には、何か別ものに気がそれたときに、もとに戻りにくいとか。例えばパソコンで仕事をしていて「西村さん、ちょっと聞いていい?」とか話しかけられると、再び、パソコンの作業に集中するまでに、時間がかかるってしまいます。

選択・・不要な情報がカットできないので、もう全部の情報が頭ん中に入ってきます。すごいボリュームですよね。そこから必要な情報が取り出せないし、頭がすごく疲れてしまいます。要は無駄なエネルギーをたくさん使うことになってしまいます。

こうした機能が社会で生活するうえで、どれほど不便になるのか、リアリティーを持って理解することはとても難しいところです。私は、就労における問題について当事者インタビューを行っていますが、ほとんどの方が、この注意の機能について悩まされていることを知りました。

それにしても、記憶よりもさらにわかりにくい注意機能について、こうして分類し言語化してきた脳科学の先人には頭がさがります。

ルポライターの鈴木大介さんと、高次脳機能障害・失語症の方を対象にインタビューをして、冊子を毎月発行しています→「脳に何かがあったとき」

私の活動をご紹介

 

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