非流暢性失語症である「発語失行とブローカ失語」の方への言語リハビリについて
おはようございます。言語聴覚士の西村紀子です。この記事では見えない障がいと言われる『高次脳機能障害』・『失語症』についてお伝えします。ご本人・ご家族・言語聴覚士を始めとする支援者の方が少しでも生活における困りごとと背景について理解することができるよう書いていきます。
発語失行とブローカ失語の人に対して、言語聴覚士は何をするのか?
言語聴覚士でなくても、医療関係者であればこの2つの言葉は知っていると思います。失語症は大きく「非流暢性と流暢性」に分けられますが、発語失行とブローカ失語は、合併している人も多く、非流暢性失語症の代表格ともいえるでしょう。
合併している人の対する言語リハビリは、何から手を付けたらいいのか?と悩む言語聴覚士さんは多いと思います。これまで私は「せっかく音を想起できても、発語失行によって音がひずみ相手に伝わらないのはもったいない」と思って、まあまあ発語失行の練習を取り入れていました。
ところが浮田弘美先生のセミナー動画(特にパート2)をご覧になってもらえると理解できると思いますが、まずは語想起なんですね。
単語が想起されないと、発語失行もなにも‥という話です。
そして語想起は内言語の問題で、発語失行は音声学的な問題、内言語へのアプローチをおろそかにして、発語失行へアプローチするのが、いかに本末転倒かです。セミナー動画についてはこちら→臨床の知恵!浮田弘美先生の発語失行セミナーパート1 と パート2
でも、まったくアプローチをしないのか?というと
想起はできているがひずむ言葉、
必ず言えるようになってほしい目標とすべき言葉、そして挨拶のように表出しやすい言葉については明瞭に言えるように練習をする。
これでアプローチしていく。
では重度のブローカの人にとって、目標とすべき言葉とは何か?
ご自身の名前、家族の名前ですね。
言語療法での例をお伝えします
70代男性 Aさんを例にあげてみると・・・
「おはようございます」
「ありがとうございました」
「さようなら」
これをリハのときに必ずご本人から言いますので、そこでひずんでいたら、ST(言語聴覚士)がはっきり明瞭に復唱すると、ご本人もまた言い直します。
それから「お名前の練習をしましょう」とすすみ、ご本人のお名前、奥さんのお名前、子供の名前と聞くと、ひずみはありますが想起できています。なので、相手が聞き取れるように、音の練習をします。
そのあとは
・絵カード等を使って、呼称の練習
・身近なよく使う言葉 通っているデイサービスの施設名、近くのスーパーや百貨店、病院、散髪、会社、好きなレストラン、お店など
これらは絵カードという刺激がないので、少しレベルが上がります。ネタや練習する言葉を、あらかじめ言語聴覚士は決めておいて、くるくる練習で繰り返します。これが会話の統制ですね。語想起の練習として会話を使いますので、決して、思い付きで話を振ってはだめです!
言語療法で使用する絵カードを選ぶのは慎重に
絵カードについては、特にひずみが多い音はないか、少ない音はないかを先に評価して、発語失行が重度であれば、ひずみが少ない音が入っている高頻度語。発語失行よりも語想起のほうが問題が大きければ、音にこだわらずに高頻度語。
浮田弘美先生のご指導でいつも思うのは、絵カード選定の重要さですね。
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