ある日突然、脳に損傷が!高次脳機能障害について考える本〜言語聴覚士のお仕事

ある日突然、脳に損傷が!高次脳機能障害について考える本〜言語聴覚士のお仕事

医療と健康、そしてリハビリの情報〜言語聴覚士というお仕事〜本日もよろしくお願いします

これまで脳卒中について記事を書きましたが、私のお仕事は「言語聴覚士」です。専門は、脳卒中後遺症に対するリハビリです。主に

  • 聞く、話す、書く、読むが難しくなる「失語症」
  • 口腔、顔面が麻痺して言葉が不明瞭になる「構音障害」
  • 記憶や注意、段取りなど社会生活を営むことが難しくなる「高次脳機能障害」
  • 食べることができない「嚥下障害」

のリハビリに関わっております。これまでの記事はこちらです。

そんな中で、最も他人に理解されにくいのが、手足の麻痺ではなく、明らかに言葉が言えないわけでもなく、一見何も問題がないような「見えない障害」と言われる高次脳機能障害です。この障害があると「社会生活」が困難となります。脳にダメージを受けたことによって、記憶や注意、感情のコントロール、思考などの機能が低下する「一次障害」だけでなく、周囲に障害を理解されないために「自己否定」「うつ病」になるなど「二次障害」も大きな問題であると思っています。

この本は、41歳にして右脳梗塞となった著者の体験が書かれています。当事者ならではの、リアルな表現でこの障害をもつとどんなことが身に起きて、どんな思考や感情となるのか、病院はともかく社会にでたらどんな障害が待ち受けていたのか、書かれています。一生懸命やっているのに、できない→パニックになって余計にできない→脳が疲労して集中力が切れる、眠ってしまう→やる気がないと思われる.。こうした日々の中で、著者は「この障害について、当事者として書くこと」を使命として、再び、筆を握り、かつての自分のスタイルにあった「弱者の立場を伝える」本を書き上げます。

セラピストは、担当する患者さんのことをより理解するために、ぜひ一読していただきたいです。そして、一般の方にも、もしかして同じ職場などで「何回も同じことを言わないといけない」「なんか容量が悪い」と思っている人について、当てはまるかもしれません。実は、私もある人から「仕事がどうしてもできないのです。10年前に交通事故にあったことがあります。その日からどうもおかしいのです」と相談されたことがあります。

もう一点、著者はお仕事で「貧困」問題について非常に詳細な取材に基づいた書籍を書かれています。その著者ならではの「今の医療制度についての問題提起」がされています。
今や、医療は年間40兆円、本当にこれだけのお金が必要なのでしょうか?そして、その多額な医療費のしわ寄せではありませんが、先進国では最低ラインの教育、子供への投資。このあたりも、医療職として考えさせられました。

ぜひ、一度、手にとってみて下さい。様々な角度から、考えることができる良書であると思います。数年後、私の仕事のあり方を変えた本として、書棚においてある本であることは間違いありません。

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