見た目には分からない、でも理解が必要【高次脳機能障害】

見た目には分からない、でも理解が必要【高次脳機能障害】

今回も、前回に引き続き高次脳機能障害について言語聴覚士の視点から書いていきます。
この障害は、脳に損傷が生じ認知機能に影響を与えるもので、身体の麻痺のように外見からは分かりにくいのが特徴です。

高次脳機能障害は、2008年に診断基準が確立されましたが、未だに医療関係者や一般の方には理解が不足していることがあります。
なぜなら、この障害は見た目には分からず、本人自身も気づきにくい「見えない障害」なのです。

日本全国で、高次脳機能障害を抱える方は約50万人から80万人と言われていますが、これは推定の数字であって、実際の数は不明確です。
多くの方は、病院内での生活では比較的問題なく、医療スタッフも気づきにくいことがあります。

病院では日々のスケジュールが決まり、リハビリや薬、検査などもサポートされ、生活が比較的シンプルです。

しかし、退院後の生活は異なります。
家事、育児、仕事、外出など、多くのことを自分で計画し、問題を解決しなければなりません。
高次脳機能障害を抱える方々にとって、これらの日常生活は難しいことがあります。
たとえば、仕事で優先順位をつけにくく、タスクの計画が難しい、情報処理が遅れ、メモを取るのに時間がかかる、注意力を切り替えることが難しく、混乱を招くこともあります。
午後になると疲れやすくなり、眠気が襲ってきます。
コミュニケーションにも課題が生じ、情報を要約して伝えることが難しかったり、相手の意図を理解するのが難しかったりします。

これらの問題は、退院後に初めて現れることが多いため、医療従事者が理解するのは難しいのが現実です。
そして、診断を受けていない方も多く存在します。

高次脳機能障害は、見た目には分かりにくいけれど、理解が必要な障害です。
言語聴覚士を含め支援職は、ますます高次脳機能障害について理解を深めていく必要があります。

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