脳損傷後の働き方を考える〜長期的視点で自分に合った選択を〜

脳損傷後の働き方を考える〜長期的視点で自分に合った選択を〜

こんにちは。言語聴覚士の多田紀子です。私はこれまで失語症・高次脳機能障害の方100名以上に、インタビューを行ってきました。また、2019年からはオンラインで言語リハを提供しています。本日から、そうした経験をもとに考えたことを書いていきます。

まずは、働き方です。脳卒中などの脳損傷を経験した後、これまで通りに働くことが難しくなる方は少なくありません。脳損傷後に直面する可能性のある課題としては、以下の3つがあります。

  • 身体機能の変化: 麻痺が残り、これまで通りに体を動かせなくなる
  • 認知機能の変化: 失語症で言葉が出にくくなったり、記憶障害で物覚えが悪くなったりする
  • 疲労やコンディション管理: 脳が疲れやすくなり、気候の変動などで体調が安定しにくくなる

こうした変化により、職場から配置転換や降格を提案される方も少なくないでしょう。一生懸命リハビリに取り組み、ここまで頑張ってきたのに…という思いから、大変悔しい思いをされることも多いと思います。特に、失語症・高次脳機能障害が合併しているかたは、これまで通りに働くのが難しくなる人が多いです。

選択のポイントは「5年、10年後の自分」

しかし、ここで大切なのは、これからの働き方を選択する際に「5年、10年後の自分が損をしない道」を考えることです。これまで頑張ってきたのに悔しいと思う気持ちは当然です。でも、目先の感情だけで判断せず、長期的な視点で自分や家族にとって最適な選択は何かを考えてみましょう。「損をしない」がポイントです。

無理をすることのリスク

これまで通り働きたいという思いから無理をすることで、メンタルヘルスの悪化や身体状態のさらなる低下を招く可能性もあります。これを2次障害と言います。短期的な満足よりも、長期的な健康と幸福を優先することが大切です。

新しい働き方のメリット

  • 年収が下がっても: 障害年金で補うという選択肢もあります
  • 時間の余裕: 家族とゆっくり過ごす時間が増えます
  • 健康管理: 自分のペースで体調を整えることができます

未来への道を残しながら現実的な選択を

今の状況を受け入れながらも、回復の可能性を伝えることも大切です。病気から回復してきた過程と、これからも回復する可能性があることをきちんと伝え、将来的なステップアップの道を残しておくことをお勧めします。

今、自分がしたい選択よりも、5年、10年後に振り返って「良い選択だった」と思える道を選ぶことが、長い目で見たときの幸せにつながるでしょう。自分のペースで、自分に合った働き方を見つけられると良いかと思います。

当事者インタビュー冊子『脳に何かがあったとき』はこちら

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