幸福度って何だろう?お金や時間よりも大切なもの

「幸せになるためには何が必要でしょうか?」
多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、お金や時間ではないでしょうか。確かに経済的な余裕や自由な時間は大切ですが、実は幸福度を決める要因はもっと複雑で、興味深いものなのです。
研究が明らかにした「幸福度の真実」
コントロール感が幸福度を左右する
1967年から始まったイギリスの有名なWhitehall Study(ホワイトホール研究)では、驚くべき事実が明らかになりました。同じ公務員という職業で、同じ医療制度を利用できる環境にも関わらず、職階が低い人ほど健康問題が多く、死亡率も高かったのです。
重要なのは、この格差が給与の絶対額だけでは説明できなかったことです。研究を詳しく分析すると、自分の仕事をどれだけコントロールできるか、仕事に満足感を感じているかといった要素が、健康や幸福度により大きな影響を与えていることが分かりました。
「決定できる範囲」こそが鍵
Karasekの「Job Demand-Control Model」という理論も、同様のことを示しています。ストレスや病気の発症率は、労働時間の長さよりも、自分で決定できる範囲の広さに関係していたのです。
つまり、どんなに忙しくても、自分で選択し、コントロールできる感覚があれば、ストレスは軽減され、幸福度も向上するということです。
社会的交流という「もう一つの柱」
幸福度を支えるもう一つの重要な要素が、社会的交流です。人とのつながりや、誰かの役に立っているという実感は、私たちの心の健康に欠かせません。
臨床現場で見えてくる真実
言語聴覚士として失語や高次脳機能障害の方の就労支援に携わる中で、この「コントロール感」と「社会的交流」の重要性を日々実感しています。
休養で自宅待機をされている間、多くの方が落ち込まれます。時間的な余裕は十分にあるはずなのに、気持ちが沈んでしまうのです。
しかし、どこかに通い始めたり、スケジュールが決まってくると、明らかにメンタルが向上してきます。それは単に「やることができた」からではありません。自分の意志で選択し、行動をコントロールしている感覚と、人との交流が戻ってきたからなのです。
支援職としてできること
これらの経験と研究結果から、ストレスフルな状況にある失語や高次脳機能障害の方に対して、支援職として何ができるかが見えてきます:
1. 小さなコントロール感を育む支援
- 本人が決められる選択肢を用意すること
- たとえ小さなことでも、自分で決めて実行できる場面を作ること
- 「今日は何から始めますか?」といった、自己決定を促す声かけ
- 将来への見通しを一緒に考え、希望を持てるような情報提供
2. 意味のある社会的つながりをサポート
- 孤立感を軽減する温かい交流の場を提供すること
- 本人の経験や知識が誰かの役に立つ機会を作ること
- 同じような体験を持つ人同士がつながれる環境づくり
- 家族や周囲の人との関係改善への橋渡し
3. 規則的なリズムと達成感の構築
- 無理のない範囲での定期的なスケジュールの提案
- 小さくても達成できる目標設定のお手伝い
- 成長や変化を一緒に振り返り、実感してもらうこと
- 「できた」という体験を積み重ねる機会の創出
お金や時間は手段、目的ではない
お金や時間は確かに重要ですが、それらは手段に過ぎません。本当の目的は、それらを使って自分の人生をより良くコントロールし、meaningful な人間関係を築くことなのかもしれません。
完璧なコントロールや豊富な人間関係を目指す必要はありません。今の自分にできる小さな選択から始めて、少しずつ「自分らしい幸せ」を築いていくことで、体と心の回復力を高めることができるかもしれません。
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