高次脳機能障害者の復職支援・評価についてNo2〜言語聴覚士のお仕事〜
前回、病院と職場では環境が大きく変わるため、多くの高次脳機能障害者の方は、復職してから困難な経験をすることについてお話しました。
記事はこちらです→高次脳機能障害者の復職支援・評価についてNo1
今回は、復職が可能であるかの評価とその難しさについてです。
検査結果から、おおまかな判断をする
病院では、高次脳機能障害と診断された患者さんや、疑わしいと思われる患者さんに対して、何種類かの神経心理学検査を実施し、その結果から、およその知的レベル、高次脳機能障害の程度、コミュニケーション能力を判定します。そして、患者さんや家族に、復職が困難であるか、可能であるかをお伝えします。
困難である場合は、年金申請をするなど生活基盤を整えるため福祉の分野に繋げる必要があり、また別でお話ししますが、その一つである障害者手帳についてはこちらに書きました。
可能と思われる場合でも、リハビリテーションがどの程度必要であるかをお伝えしなくてはいけません。この時、検査結果はあくまでもおおまかな判断基準にすぎず、次にあげる労働環境や、患者さんの要因と合わせて判断することになります。
検査結果だけで判断はできないから難しい
復職は個人の能力以外に、病前にどんなお仕事を、どのような職場でしていたのかという労働環境が大きく影響します。例えば、
- 業務量や、残業時間はどの程度か?
- 通勤時間や、交通手段、ラッシュの程度はどうか?
- 人員配置にゆとりがあるか?
- 病前の人間関係は良好であったか?
- 職場の人が、高次脳機能障害について理解があるのか?
- 可能である業務に変更(配置転換)はできるのか?
といった点を考慮しなくてはなりません。
さらに、患者さん自身に「どうしても職場に戻りたい」という意欲があるのかどうかも影響します。しかし、この意欲が、高次脳機能障害者では持ちにくいのです。なぜなら、自分の状況が理解できず「仕事なんてすぐにできる」と思っている(病識低下と言う)、「もう何もできない、したくない」と感じている(意欲低下と言う)人が多いからです。これらが原因で、私たちから見たら、リハビリをやれば病前まである程度は機能回復するレベルなのに、やらない、拒否するという人も多く見られます。当然、回復は遅れてしまいますし、必要な支援もスムーズにできません。
これらを踏まえて、病院におけるリハビリテーションでは何をすべきか、またお話ししたいと思います。
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