高次脳機能障害者の復職支援・評価についてNo1〜言語聴覚士のお仕事〜
高次脳機能障害とは、脳卒中や頭部外傷など脳損傷による後遺症の一つです。症状については、こちら高次脳機能障害情報・支援センターの説明をご覧ください。このような症状は、手足の麻痺と違って、見た目ではわかりにくいため、見えない障害と言われています。周囲に理解されにくいため、復職してから問題が生じることが多いのです。
復職支援が必要な人はどのくらい存在するのか?
今回、復職支援の対象と思われる20〜60代の人たちの中に、高次脳機能障を呈している人がどのくらいの存在するのか、また毎年どのくらい発症しているのか調べて見ましたが、調査自体も少なく、はっきりした数値がわかりませんでした。一番近い論文としては、こちら蜂須賀研二先生らが2008年に調査したものです。ここでは、6歳から69歳で、リハビリテーションにより社会復帰をめざす中等度障害の高次脳機能障害者は全国で年間2,884人発症し、累計で68,048人と推定されています。
しかし、軽度の高次脳機能障害であれば、障害が見逃されている、または本人が認めないなどの理由で、診断がつかずに自宅に退院、復職したあと問題が生じている人は少なくないと思われます。しかし、軽度の人について数さえわかりません。
病院と職場では、環境が大きく異なる
手足に麻痺があれば、歩行や更衣、排泄など、身のまわりの動作も今まで通りにできないため、スムーズに復職できないことはすぐにわかります。しかし、手足に麻痺がなければ、身の回りの動作もできます。配膳や消灯時間などスケジュールが決まっており、自ら行動することが少ない病院内では問題なく過ごせます。なので、病院スタッフでさえ、障害に気がつかないことも多いのです。
しかし、多くの職場では、自分でその日の計画を立てる、段取りをすることが必要ですし、突発的な事態が起こることも少なくありません。こうした環境では、予定を忘れる、ミスが多い、段取りよく業務が遂行できない、適切な判断ができないなど、職場では様々な問題が生じることが多いのです。こうしたことが重なった結果、職場の人からやる気がないとみなされることも少なくありません。
このため、私たち医療職は、患者さんがもとの職場に戻るにあたって、何にどの程度の問題があるのか、慎重に評価しなくてはいけません。そして、患者さんや家族に説明をし、リハビリテーションや支援が必要であることを理解してもらう必要があります。
では、どのように評価をすすめていくのかについて、次回お話します。
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