「壊れた脳 生存する知」ブックレビューNO2
壊れた脳生存する知ブックレビュー続きます。
さて、当時まだこの高次脳機能障害があまり知られていなかった時代、山田規久子先生は、医師という職業柄もあり、非常にこの高次脳機能障害について勉強を始めます。
高次脳機能障害は裏を返せば、壊れた脳の部分が 正常であった時にどんな役割を果たしていたか教えてくれるものでもある。手当たり次第に本を読むうちに、壊れた脳の示す症状から正常な脳の同じ部分が何をしているのかを知る学問を神経心理学と呼ぶことを知った
この神経心理学の第一人者であった山鳥重先生と交流を深める中で、どんどん学んでいくわけです。このあたりは「めっちゃおもしろい」とさえ書いています。
私が脳卒中後、毎日繰り返している失敗にも、必ず科学的理由がある。それを知ることは自分の障害を理解し 乗り越えていくための大きな助けとなるはずである脳卒中で後遺症が出ると、多くの人は何も出来なくなってしまった自分にショックを受け絶望感に浸りがちだ。周りの人が全然分かってくれないと感じたり、自分を受け入れてくれない社会を恨んだ、、自分だけが社会から取り残された気がして焦ることもあるだろう。
こんな辛いリハビリを続けて何になるんだと、障害から目をそむけ、全てを投げ出したくなるかもしれない。
このあたりは、多くの当事者の気持ちを代弁しているのではないでしょうか。
「もういい、ほっといてくれ」「死んだほうがよかった」「先生にはわからない」
そんな言葉を何度も何度も聞いてきました。しかし、山田規久子先生は
だけど辛い悲しい大変だとぼやいていても病気が良くなるわけじゃないへこんだまま立ち止まっていたくはない訳も分からずに、やみくもにもがき苦しむのはごめんだ。
なぜ自分がこんなことで苦しんでいるのか、原因が知りたかった。この障害を客観的に見つめて正体を突き止めたかった。
知る権利と知らせる義務
さて、生活期にもどった当事者と話をしていると、病院で説明をしてもらえずに困ってる人 がたくさんいます。「病院の人が説明してくれなかった」その発言の背景には
- 説明を受けたけれども、その時には分からなかった
- または忘れてしまった
という当事者の障害特性もあります。
- または医療者がその障害のことをよくわかっていなくて、説明できなかったというのもあります。
しかし
- 障害について知ると「かわいそうだ」とか、 あまり知らない方がいいんじゃないかとか
そういった一医療者の感情と言うか、思い込みによる判断で、伏せておくということもあるのです。
これは本当の意味では当事者の気持ちに寄り添っていませんし、利益にならないのです。そもそも、当事者が自分の障害について知る権利を無視している行為とも言えます。もちろん、どのように伝えるか、いつ伝えるかの配慮は非常に大事です。それと、伏せておくは全く違う問題です。
そもそも医療者には知らせる義務があります。自分の障害を知らないと、自分の将来に何か起こるかわからないですよね 。それは本人にとって非常に不利な状態です。
これまで行ってきた数々の失敗も理由が分かると、「なんだそういうことか」と気が楽になる。
と、書かれています。多くの高次脳機能障害者は色々な生活の上で困りごとにぶつかった時に自分を責めてしまいます、なので、うまくいかない原因が自分ではなく、障害だったと知った時には、「ほっとした」という発言を聞きます。
自分の状態を知らない、知らされない、これはある意味、人権の問題です。癌の告知についても、長年、議論されてきました。可哀そうとかでなく、人権の観点からも考えたいものです。
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