〜コロナ禍と高次脳機能障害〜 驚いた時の表情は?
高次脳機能障害者は、周囲の情報処理が難しくなります。なので、自分の身の回りの情報を理解して、自分の中で解釈するだけでも、精一杯な場面が多々あります。その状態を「やわらかいプリン」に例えたのが、鈴木大介さん。ちょっとつつくと、ぐちゃっと崩れる(パニック状態になる)、それをなんとか持ちこたえながら生活をしているとのこと。
驚いた時の表情は?
こうしたゆるいプリンと表現した「自我・現実感」が、何かのきっかけでいかにも崩れそうになった場合、ご本人は、一生懸命に、プリンを保とうとします。自分の周囲に何が起こっているのか情報を処理しようと、頭をフル稼働しているのです。もう本人としては、目いっぱい。しかし、そんな時の表情、雰囲気は、他者から見ると「ぼーっとしている」ように見えるのです。これは大きな誤解ですね。
うん10年前(そう、まだ私が大学生だったとき)、比較行動学で有名な糸魚川直祐先生の授業で、「人間がもっとも驚いたときの顔をしてみて」と言われました。学生の私たちはみんな、目を丸くして、口をあけて、いわゆるびっくり!の顔をしました。そのとき、先生は
「違います。最も驚いたときの顔はこうです」
といって、ぼーーっとした顔をしました。
「チャウシェスク大統領が、自分に対する反乱、革命が起こった時の表情が、これでしたね」と説明されました。(Wikipedia 参照)
自分のキャパシティーを超えた情報にさらされると、こういう「ぼー」っとした表情になるらしいです。知らなかった人は、多いのではないでしょうか?私も鈴木大介さんから聞いて、この大学の授業を思い出しました。
当事者が語らなければわかりにくい、誤解されやすい内面を知ることは、目の前にいる高次脳機能障害者を理解するために、大事だと思います。リハビリ職の方、「ぼーっとしてやる気がない」「反応が乏しい」と、目の前の患者さんについて、評価していませんか?本人は脳内フル稼働の状況かもしれません。
さらに、現実感が希薄だと、今、何が起こっていて、何が自分に必要なのか、判断しづらいものです。その状況で、リハビリの必要性は実感できないのも当然な気がします。
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