「食べる選択」どうしたらいい?医療従事者ができること~発語がない女性のケース~
言語聴覚士として、嚥下障害がある人にどのように関わってきたのか。嚥下障害がある人は、しばしば意思決定の機会を奪われることがあります。言葉による表現が難しくなるからです。
本日も、前回の続きになり、事例を通じて考えていきます。
ケース② まったく発語がなかった80代女性
施設の名前を伝えると、「帰るのか?」
次のケースは、脳梗塞で経口摂取が難しいため、経鼻経管栄養となった、80代の女性です。発語なく、口腔ケアや吸引、食事介助も拒否し、叩くなど暴力行為がありました。
しかし、抜管を繰り返し、抑制用のミトンだけでなく、手首をベット柵に固定しての注入となりました。
その姿をみた娘が「寿命が短くなっても施設に戻してほしい」と訴えました。
患者には、これまで発語が全くなかったが、念のため、本人にもともといた施設の名前を伝えると、「帰るのか?」と発言がありました。
これまでと違う反応をみて、施設に戻りたいという意思が強いと、家族、職員ともに判断。看取りで施設に戻り、数日で死亡。
このケースでは「栄養、安全を確保したい」という医療者の判断だけで、抑制など、本人、家族にとって苦痛となる状況を招いてしまいました。
認知症の患者に対する意思確認の方法
認知症で会話が困難になってきた人、特に構音障害や失語症があると、意思表出が難しくなります。
ここで大切なのは「意思表出できない」と安易に判断しないことです。
分かりやすい言葉で話しかける、相手の表情などを読み取るなど聞き手が工夫をすることによって、本人の意思を引き出せる場合も少なくありません。このあたりは言語聴覚士だからできる!ではなく、生活を見ている介護士さん、看護師さんの方が得意なことも多いです。
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