「食べる選択」どうしたらいい?医療従事者ができること~経鼻経管栄養を併用した方~

「食べる選択」どうしたらいい?医療従事者ができること~経鼻経管栄養を併用した方~

最後のケースです。

ケース③ 経鼻経管栄養をしながら、少量のペースト食を介助で食べていた70代女性

「そんな話は誰もしてくれなかった」

 

最後は、脳梗塞再発により、嚥下障害が悪化したケースです。

構音障害で発話は不明瞭、発話量も減少し、自分から話すことはない。

かつて自身の親を介護している時に、胃ろうで寝たきりの人がいることをテレビ番組で知り、

「胃瘻はやめてほしい」と子供に語ったエピソードがあります。

このため家族は「今の母は判断できない。この時の母の意思を尊重したい」と胃ろうを拒否。

 

しかし、本人に「この鼻のチューブを抜いて、胃に穴をあけ、そこから栄養を流すこともできる。

施設に帰ることもできる。痰も減るかもしれないし、食事も楽になる人も多い。」とゆっくりと説明したところ、

 

そんな話は誰もしてくれなかった。帰りたい。穴は痛いのか?」と質問された。

その後、胃ろうを造設し、施設に戻りました。

 伝えたい意思を表出する能力があったにも関わらず、認知症で意思表出も判断もできないと医療者や家族が判断し、
かつての発言をもとに、治療方針を「本人不在で」決めらそうになった事例です。
どのような医療やケアを受けたいかは、自分が元気であった時と、要介護となった時では変わることも多いため、
その都度の丁寧な意思確認が必要であることを再確認しました。

 

正解がないからこそ大切なのは丁寧な話し合い

私たち医療者は、「安全」「救命」を優先する傾向にあり、加えて業務忙しく、ガイドラインにそって早い判断をしがちになってしまいます。

家族が医療者に質問や意見するのをためらっていることにも気がつかず、認知症の人は判断能力に欠けると考え、

説明と同意は得たとしても、実情は医療者だけの判断で治療方針やケアが決められることも少なくありません。

 医療者にとっては当たり前でも、初めて説明を聞いたり、管につながれている姿を見た家族のショックは大きいもの
まして、新しい環境に適応するのが難しく、医療処置やケアの必要性が理解しにくい認知症の人の不安や恐怖、混乱は大きいです。
 これらの点を認識し、少しでも理解してもらえるように、正しい情報を、簡単なことばで説明するスキルが医療側に求められます。
さらに相手の意思を引き出せるように関わることが大切です。そこから導き出される結論は、認知症の人が歩んできた生活と家族との関係により様々で、正解はないのです。

 

医療者が、本人の意思を最大限に汲み取り、家族、関係者としっかり話し合いができたかどうか、本人と家族が選択した結果に納得しているかどうかが大切なのです。

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