言葉がなかなか出てこない(非流暢性)失語症の方とのコミュニケーション~言語聴覚士のお仕事~
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大きく分けて2タイプ
失語症は古典分類といわれるだけでも8タイプ、その他、大脳皮質の内部の損傷による失語症とか、さまざまなタイプがありますが、めちゃくちゃ乱暴にわけてしまえば「非流暢性」と「流暢性」の2タイプです。今日は、この非流暢性失語症の方とのかかわり方についてお伝えします。
非流暢性失語症とは
こちら多くの人が描く失語症のイメージですね。
- 「あの、あの、」みたいな感じで言葉がなかなか出てこない。
- 頭に言いたいもののイメージはあるけれども、考えは浮かんでいるんだけれども、言葉がひっぱって来れない。
- 話すにくらべて、理解は良いと言われています。しかし、よく見てみると、相手の表情を読み取ったり、状況判断して、理解を補っていて、細かいところは曖昧な人も少なくないのです。
- ご本人はなかなか言葉がでない、中には、声もでにくい人もおられるので、喋れないという自覚が強くあります。なので、うつ傾向になりやすいともいわれています。
非流暢性の方への関わり方
とても基礎的なことになりますが、以下にまとめてみました。
- まず言葉が出るまで待つ。
なかなか言葉が出てこない。図書館の中で、欲しい本はわかっているけど、手が届かない、どこにあるのかなって探してる状態をイメージしてください
なので、まず待ってください。
- それでも出ない時は、こちらが思いつくだけヒントを出していきます。
例えば、話の流れ、その場の状況から
昨日行った場所の話をしたいのかなと思ったら、「病院ですか」とか、「公園ですか」とか
ご飯のことを話してるのかなと思ったら、「パンですか」「ご飯ですか」「お味噌汁ですか」「スープですか」というふうにして、いろんなヒントを出していってください。その中で当たれば「そう、それ」となりますし、当たらずとも遠からずであれば、「そうだけど・・う~ん」と、言いたい言葉に近しくなりますし、「あ、それでなくて、~」と言葉を引っ張ってくるヒントになります。とにかく、思いつくだけヒントを出していきます。
- 非流暢の方は、どうしても「言葉がでない」ことに、本人と周囲もこだわってしまいがちですが、実は、私達の会話というのは「イエス・ノー」を確実に言えば、ある程度、成立します。
例えば、「昨日公園に行ったんだよ」ということを言いたかったとします。
その言葉が出ないとしても
「病院ですか」→違います。
「スーパーですか」→違います。
「公園ですか」→「そうそう!」
こういうふうに、YESとNOが確実にできるだけで、言葉が出なくても、わかるんだよっていうことを知っていただきたいですね。
- 今までのように、文章で伝えようとしないこと。例えば「昨日のお母さんと一緒に公園に行った」というふうに、一度にたくさんのことを言おうとすると、いくつかの言葉を引っ張ってこないといけないので、難しい。「もういいわ」っていうことになってしまうんですが、会話というのは、1個に対して1個、伝われば成立するんですね。
なので
「昨日なんだけどね」「はい、昨日ですね。だれかと一緒でしたか?」
「お母さん」「あ、お母さんですか。どこへ行ったのですか」
「公園」「あ、昨日、お母さんと公園に行ったのですね」
こういうふうに、一つづつ重ねていけば、情報伝達できますよね。
失語症の方があれ、あれとあれはとか、一度に言おうとしているときには
「一つずつお話してください」と声をかけてください。
理解を確実に
もし、「イエス・ノー」を確実にできたら、これも会話は成立してきます。非流暢の方は「話せない」ことが前面に出て、理解については、よく確認もせずに「こっちが言ってることはわかってるんですよ」とスルーされがち。失語の方に、自分が伝えたい内容を理解してもらう配慮や努力をしない人が多いです。
本人、家族ともに「なんとか話せるように」という訴えは多いですが、理解についてはあまり問題にしていません。でも本当にどこまでわかっているのか、長い文章でもわかるのか、普通の速度で話をしてもわかるのか、ちゃんと把握して、確実に相手が理解できるような話し方の工夫をすることが大事なのです。
発声練習の動画
こちら失語症の方のための発声練習の動画です。ぜひご活用ください!チャンネル登録もお願いします♪
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