脳卒中急性期における低栄養と嚥下障害No1〜言語聴覚士のお仕事〜

脳卒中急性期における低栄養と嚥下障害No1〜言語聴覚士のお仕事〜

医療と健康、そしてリハビリの情報〜言語聴覚士というお仕事〜本日もよろしくお願いします。先日、日本臨床脳神経外科学会に「嚥下障害者と低栄養に関する現状と問題点」について発表してきました。データ不備が多く、発表を躊躇しましたが、まとめてみてよかったなと思っています。なぜなら、まだまだこの問題については、知られていないことがわかったからです。

脳卒中の急性期における嚥下障害者が必ず直面する問題が「低栄養」です。そして、この「低栄養」が、回復過程において、悪影響を及ぼすのですが、そのことが多くの現場で浸透しているとは言い難いのが現実です。

入院時にすでに低栄養になっている人が4人に1人

ざっと、私の職場で半年間にわたって調べてみたところ、入院時にすでに低栄養を呈している患者さんの割合は25%強、つまり4人に1人は低栄養の状態で入院されます。在宅よりも施設からの人に多い傾向がありました。

そして、半数以上が入院中に体重減少を認めました(肥満によるカロリー制限をした人は除く)

こう聞くと、ひどい病院のように感じるかもしれませんが、多くの文献やデータは同じような状況です。なぜなら、脳卒中急性期においては

  • 嚥下障害を高率に認め、今まで食べていたものが食べられなくなる
  • 易疲労性、注意障害などにより、1回の食事に提供されたものを全量食べきる患者さんは少ない
  • せん妄、昼夜逆転などにより、毎回、食事時間に起きているとは限らないし、拒否することも多い

これらを補うために、点滴や経鼻経管栄養(鼻からチューブを入れて栄養剤を流し込む)などの代替栄養が必要ですが、ほとんどの患者さんは「引き抜いて」しまうし、チューブ挿入に至っては「家族さんの理解が得られにくい」ことが挙げられます。また、安全確保のために、手袋をしたりなど「抑制」が必要になることも多く、人道的見地から、病院職員も消極的になってしまう傾向があります。

これらから、「その患者さんが必要とする栄養を、毎日、確実に摂取してもらう」ことが非常に困難なのです。

急性期における低栄養は、長期にわたり予後に影響する

栄養量の確保が困難である一方、病気の治癒過程においては、必要栄養量は増えるのです。なので、低栄養がすすみます。入院時の低栄養は肺炎などの合併症を有意に増加させ,入院 1 週間後の低栄養が独立した予後不良因子となっている(脳卒中ガイドライン)など、急性期病院に入院中の問題として指摘されて久しいのですが、こちらの論文にあるように、急性期を退院したあとも、長期にわたり、影響を及ぼすことがわかってきています。

脳卒中患者の急性期病院退院時栄養状態が機能転帰に及ぼす影響

脳卒中患者における急性期病院退院時の栄養状態が回復期病院退院時の日常生活活動に及ぼす影響について←こちらは有料閲覧となっています。信州脳卒中地域連携パスを用いての研究結果、急性期の低栄養が重度なほど,回復期退院時のADL自立の可能性が低くなることが示されています。

これほど、重要な問題ではありますが、さて、どれほど栄養の重要性は認識されているのでしょうか?次回に続きます。

私の活動をご紹介

 

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