高次脳機能障害の診断見逃しについて〜言語聴覚士のお仕事

高次脳機能障害の診断見逃しについて〜言語聴覚士のお仕事
私の研究テーマの一つ「軽度高次脳機能障害者の社会生活における困難さ」について。なぜなら、彼らは一度は復職します。が、そのあと継続しているのかどうか?軽度であるがゆえ、研究されていないのです。そして、軽度といえど、大変な思いをしている人はたくさんいるのです。こちらある機関からヒアリングの依頼があり、その時の原稿です。

推定人数の意味するところ

高次脳機能障害とは脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患、または頭部外傷などの脳損傷が原因によって、感情のコントロールや、言語や記憶、思考や判断能力などの認知機能が障害されます。このため、コミニュケーションに行き違いが出たり、約束を忘れたり判断を誤るなど、様々な問題が生じ、人間関係、社会生活が困難となります。現在推定人数は50から80万人と言われています。10代から60代、重度でなく、就労や就学を考慮できる人に限っても、全国で10万人と言われています。
この障害を持った人の中には、手足にマヒがない人も多く、簡単な会話はできるし身の回りの事はできるので、障害があると周囲の人はわかりにくく、見えない障害と言われています。
さらに、障害特性ゆえ、本人が自分の障害に気が付きにくいと言う二重の見えにくさがあります。
この障害は医療の現場でも認知度が低く、ある調査によると、急性期の病院で医師から説明を受けた人は15%、回復病院に転院した人でも診断を受けた人は21%しかいないとあるように、医師からの診断を見過ごされている人も多いのです。
病院を退院して社会生活に戻ると、障害により今までできていたことがうまくいかず、様々な問題が起こり、人間関係にもトラブルが生じます。しかし診断を受けていない場合、本人も家族も何が原因かわからないまま、自己否定や退職、引きこもりなど二次障害を引き起こすことが多いのです。しかし、現在病院を退院し、医療を離れた人の生活実態の調査はなくこうした人たちが全国で何万人いるのかわかっていません。

診断されないことによる社会的不利

   医療、行政、福祉サービスを受けるには、出発点として高次脳機能障害であるという診断が必須です。 診断が見過ごされると、必要なリハビリも受けられず回復の機会を損失するだけでなく、情報提供をうける機会を逸してしまいます。結果、本人が自分の障害を自覚することは難しく、周囲の人にも理解されることがありません。
さらに、相談窓口など社会資源にアクセスすることも非常に困難となります。障害の程度は同じでも、診断を受けた人と、そうでない人のその後の生活における問題、困難さの差は非常に大きく、診断の見過ごし削減は急務であると考えます。
しかし、救命を任務とする脳外科医を始めとした医師の多くはこの障害について教育を受けておらず、看護師もリハビリ職も詳しくは知りません。
当事者会や講演会では、社会に戻ったものの、なぜうまくいかないのか?原因がわからず、周囲に「やる気がない」と言われ続けて数年過ごしたという当事者に、よく出会います。彼らがなんとか診断に至ったときの感想は、「あ、障害だったのかとホッとした」です。そう、自分のせいでなく障害のせいだったのかと知ってホッとするのです。いかにこれまで困惑した年月を過ごしてきたか、想像に難くありません。

私の活動をご紹介

 

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください